折原家2

□甘えたくなる日
3ページ/13ページ

彼に依存しているとも知らずに[自分の意志で行動している]そう思うかもしれない。


―――……私も結局依存しちゃってるんだよね……。


彼が私にたくさんの選択肢を与えてくれる。

それは臨也にとって嫌な事や良い事、色々あるかもしれないがそれでも彼は私が選んだ事として認め、受け入れる。

そういう事はやろうと思ってできる事ではないし、[人間が好きだから]と言うだけで受け入れられる事でもないと思う。


―――凄いよなぁ……本当。


『……本当に臨也は人間が好きなんだね。ある意味嫉妬しちゃうよ……』

「君だって人間じゃないか。人間である以上、俺は君に興味があるし、もし愛子が罪歌のような異形になったとしても、受け入れるつもりだよ?」

『好きじゃないくせに……』

「もう君は俺の妻で、10年以上一緒にいるんだよ?今更異形だからっていう理由で切り離せる程、俺は薄情な人間じゃないけどね」

『……情、っていうやつ?』

「……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないね。君が異形か、考えた事が無かったよ」


そこまで愛している人間、という生物に。

自分も同じ人間の筈なのに、彼にとって名前を知っている私も同じ[人間]というだけで、臨也も名前を知らないような人達と同じカテゴリーに入れられ、[愛してる]と言って愛されている。

きっと他の人間達はそんな事は知らないだろうし、臨也の顔すら知らないだろう。それでも、彼はそんな顔も知らない人達を愛しているのだから何だかムカついてしまう。

私は貴方以上に貴方を愛している―――そんな張り合いのような、嫉妬のような感情を抱いてしまうのだ。


『……じゃあ、もし私がセルティさんみたいな妖精だって今、告白したらどうしてた?』

「……そうだな。……どうしてたんだろうね」

『曖昧だね。受け入れてくれるんじゃないの?』

「じゃあ反対に聞くけど、もし俺が今ここで、君と同じような事を告白したらどうしてたんだい?」


彼らしくない歯切れの悪い言葉。

本当にその想像をしているのか、それとも既に想像していたのか、僅かに考えているようにも見えた。

もし彼が妖精や他の異形だったら―――私はどうしていただろうか。ここまで来れたのは勿論他の人のおかげでもあるが、ある意味命を助けてくれたのは臨也が居たからこそだ。

命があったからこそ、今の友人達と遊びに行ったり、子供達と遊んだり、出掛けたりする事ができた。


―――……臨也がどんなものでも……私は……。


『私は、受け入れるよ。もう、臨也なしじゃ生きていけない身体だから……。どんな姿だろうと、人間じゃなくても、私は折原臨也が好きだから』

「……熱烈な告白を受けた気がするよ。君が考えてる間、俺も考えたんだよ。[折原愛子]っていう人間についてね。……その結果、俺も、君が居ないとダメみたいだ」

『っ…………』


優しい声でそう言う臨也。

全くもって他人から見たら[何言ってんだコイツら]と言えるような状況かもしれないが、異形をそこまで好きではない臨也にとってかなり重要な事だと思う。

もし異形だと隠して生きてきた時に―――これだけ好きなのにただ[人間と違う]というだけで今までの関係が崩れてしまう可能性があったからだ。

まあ実際にはそんな事は有り得ないのだが、彼の愛を試したくなった、そんな所だ。


―――臨也の愛が深かった、って事だよね。

―――ちょっとだけ……安心したかも。


「勿論、俺はセルティ達を愛せるかって言われたら多分、愛せないだろうねぇ。アイツらは簡単に人間の積み重ねてきたものを乗り越えていくから嫌いだよ」

『……まあ。首がなくても生きていけるなんて、人間なら有り得ないもんね……』


ハッキリと[嫌い]と口にする臨也。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ