折原家2
□回転寿司
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<回転寿司>
新宿 夜 某マンション
愛子視点
「ねえ、ママ!おすし食べたくないっ?」
「おすし、食べたいよねっ」
『え……別に食べたいとは思わないけど……どうしたの?』
夜ご飯を作っている最中に子供達は何かに影響されたかのようにキラキラとした顔で台所に立つ私の方へとやってきて、まるで仲間を欲しがっているかのようだ。
―――テレビのCMを見て、食べたくなったのかな……?
「おすし、食べたくなっちゃったの!でもね、パパは今日、おすしはいらないって!」
「だから、ママはおすし食べたくないかなぁって!」
『ああ、そういう事か……。私もお寿司はいらないかなぁ』
「「ええええええっ」」
今日お寿司が食べたいか、と言われたら夜ご飯もあるし、食べなくてもいいと答えるのだが、子供達は今日、お寿司が食べたいらしく、私の言葉に納得できないようだ。
そんな子供達や私の様子を見ていた旦那は[ほら、やっぱり]と言わんばかりの表情をしており、こちらの答えが分かっていたかのようだ。
「今日は諦める事だね。明日ならいくらでも連れて行ってあげるからさ」
「本当っ!?かいてんずしがいいっ」
「今ね、100円でいっぱい食べられるんだってっ!」
「……回転寿司?露西亜寿司じゃダメなの?」
「「だーめっ」」
―――やっぱりか……。
いつもならどんなものでも喜んで食べてくれる双子だが、こうやって夜ご飯を否定するのは何かあるとは思っていたが、
二人の言葉を察するとテレビのCMで回転寿司が今なら100円、なんて営業文句のようなものを聞いて食べたくなったのだろう。
そして旦那からしてみれば、どちらも同じお寿司ならば、時々買い、お世話になっている露西亜寿司の方がいいようだ。
―――まあ、値段で選ぶなら……同じぐらいだと思うけど……どうなのかな。
1皿100円という事は5皿食べたら単純計算で500円になる。そう思ったら旦那の好きな大トロが入っているちょっとお高い露西亜寿司の方がいいのでは、なんて思ってしまった。
「夏休みだからねぇ。人が多いんじゃないかな」
「じゃあ、あたしと紫苑とママでかいてんずし食べに行ってくるから、パパ、お金ちょーだいっ」
「とーとはロシアすしの方がいいんでしょー?」
「……。行かない、なんて言ってないじゃないか」
―――父親を扱うの、上手くなったなぁ……。
ものの見事に子供達の策略にハマる旦那。
もっと彼―――折原臨也ならば二人を黙らせる言葉もあったと思うのだが、
何分、彼は誰にもそう言った事は言わないが、寂しがり屋で構ってちゃんなので家族に置いて行かれる、というのには耐えられないだろう。
―――困った人……。
「じゃあ、やくそくね!明日、かいてんずしにつれていってくれるって!」
「……分かったよ。でも人が多いのは覚悟しておきなよ?」
「「はーいっ」」
―――――――……
翌日 夕方 池袋某所
愛子視点
「おすし、おすしっ」
「ねえ、まだー?」
「まだだよ。もう少し先の所かな」
少し早い時間の方がいい、という臨也の提案により、池袋へとやってきた私達。
別に新宿でも良かったのではないかと思うのだが、後で寄る所がある、と言われたのでそれなら仕方ないか、と納得し、4人で歩いていると―――
『うっわ……凄い人……』
まだ早い時間だと言うのに、考えているのはみんな同じなのか、既に外から見てもたくさんの人がまだか、まだかと待っている状態だった。