折原家2

□今年の夏は
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「とりあえず、どうする?朝ご飯とか大変じゃない?」

『そうなんだよね……。まあでも、もう少ししたら朝ご飯できるし……我慢すれば……』


毎日クーラーに頼っているから暑いのであって、他の家はそこまでクーラーに頼って生活はしていないだろう。

だが、今までクーラーと共に生活をしてきたこの家族にとって、ほんの少しの時間でも、半日でも、1日でもクーラーが無い、というのは辛いもので―――


「あっつーいっ!おへや行ってくる―」

「あたしもーっ」


そう言って双子は朝ご飯が入ったお皿を持って2階に上がってしまい、残されたのは私と旦那―――折原臨也だけとなった。


『……臨也は暑くないの?』

「我慢できない程じゃないよ。君は?辛いのなら部屋に戻ってもいいんだよ?」

『……臨也がこの部屋に居るのに私だけ涼しい所には居られないよ……』


本当なら暑い所なんていたくない。

だが、臨也はそう言いながら朝ご飯を口に運んでおり、動く気配がなく、

[我慢できない程じゃない]と言っているのに妻の私が旦那を放っておくわけにもいかないし、寂しがり屋な彼を一人にしておけない。


「……別にいいのに。君ってさ、本当にお人好しだよね。……そういう所も俺は好きなんだけどさ」

『!……っ、うん』


―――暑さとは別の汗が出そう……。


ニコリと笑いながらそう言う彼の言葉に不意打ちのようにドキリ、としてしまい、俯きながら残りのご飯を食べ終わり、そそくさと流し台へと持って行く。


「やっぱりここ、あついねー」

「ねっちゅうしょーになっちゃうよっ」

「大袈裟だねぇ。きちんとお前達が帰ってくるまでには直しておくからさ、安心して学校に行っておいで」

「「はーいっ」」

「やくそくだからねっ」

「あついの、いやだからねっ」

「分かってるよ」


臨也が丁度食べ終わる頃ぐらいに子供達も食べ終わったのか、涼しかったであろう部屋からお皿を持って出てきてここの暑さに文句を言っていた。

父親と子供との差を見ると[流石現代っ子]なんて思ってしまうが、暑さの感じ方というのはそれぞれ違うのでそういったものが見られるのは面白いものだと思う。


『いってらっしゃい』

「気をつけるんだよ」

「うんっ、いってきまーすっ」

「いってきまーす!」


暑い所には居られない、とばかりにせっせと用意を進め、ランドセルを背負って玄関へと向かう双子。

それを臨也と一緒に見送り、ドアを閉めればやはり暑さは消えなくて―――これからあれこれ家事をしなければいけないのかと思うと気分も落ち込むというものだ。


―――やーりーたーくーなーいーなぁ……。


心の中で愚痴を言いつつ、4人分のお皿を洗いながら考える。外も暑く、中も密封されたような暑さが広がり、やはり蒸し暑く、天国とも言えるのは自分達の寝室だけだろう。

臨也は子供達が学校から帰ってくるまでには、と言っていたが私にしてみれば、長い長い時間だ。

私もどこかで時間を潰してくる―――なんて心配性な所がある私がこの部屋の中に彼を置いて行くなんてできるわけがない。

それにクーラーが壊れただけで他の家電は生きているので家事をやらなければ誰もやってくれない。


「……今日だけは俺が許してあげるよ?暑いのなら暑いって言えば良い。君が我慢する必要なんてないんだ」

『そ、そうだけど……やっぱりダメ。ちゃんと水分補給もするし、本当にダメなら駄目って言うから……臨也の傍に居てもいい?』

「……。……君は本当にお人好しだ」


―――――――……

数時間後

愛子視点


『暑いねー。臨也はちゃんと水分取ってる?』

「大丈夫だよ。君こそ動く事が多いんだからきちんと水分は取るんだよ」


ほんの少し動くだけで汗が流れそうで―――お風呂に入りたい気分だったが、折角お風呂に入ってもこの暑さでは全く意味がなさそうなので早く直ってくれる事を祈るばかりだ。
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