折原家2

□大きくなったおつかい
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―――臨也が一番嫌だと思うし……やっぱり4人で行った方が……。


「……。分かったよ、少しだけ待っててくれる?」

「「?」」

『パパ、いいの……?』

「これも成長の為だよ。俺や君がダメって言い続けていたら、大きくなった時にどこにも行けない子供になるだろうからね。

それに……反発して、帰って来なくなった、なんて事にもなりかねないから」

『そ、それはそう、だけど……』


確かに前はお金、というものをあまり知らずにおつかいに行ってしまったのがいけなかったが、時を経て二人は色々と解るようになった。

一緒に買い物に毎日行くので臨也よりも、買い物と言うものに詳しいぐらい、二人は成長した。

だが、流石にもう17時を過ぎようかとしている時に行かせなくてもいいのではないかと思ってしまう。

ここからスーパーまでの距離は遠くはないので何かあれば走って帰って来れるかもしれないが―――それでも親としては心配な部分が大きい。


「俺だってこの子達の親だよ?何の策もないままおつかいに出すわけないだろう?」

『……。……!あ、そっか。そうだね』

「「?」」

「それじゃあ二人共、この中にお金を入れておいたからこれで鶏肉を買ってきてもらえるかな。残りはお前達の好きなように使ってもらって構わないから」

「!本当っ!?おかし、いっぱいかってもいいのっ!?」

「!ねーねー、その中にいくら入ってるのー?」

「開けてからのお楽しみ、って事じゃダメかな。ちゃんと鶏肉が買えるぐらいのお金は入ってるから安心してよ」

「ええええっ、おかしいっぱいかえないかもしれないじゃーんっ」

「おーしーえーてーよーっ」


―――そんな秘密にしておかなくても……。


お金を出す時、と言ったら最後の会計をする時だけなので子供達の言い分も解らなくもない。

だが、鶏肉を買ってからもう一度中に入り、自分達の好きなお菓子を買ってでもいいので私としては[早く行かないと遅くなっちゃうよ]という気持ちの方が大きい。


「ほら、早く行かないとパパが後ろからついていく事になるけどそれでもいいのかい?」

「!やだっ!あたしたちで行くっ」

「!とーといたら、おかしいっぱいかえなくなっちゃうもんっ」

「それなら気をつけて行ってくるんだよ。いつも俺が言ってる事、きちんと守るようにね」

「「はーいっ」」


臨也の言葉に簡単に流されてしまい、慌てて靴を履き、お金を持って玄関から出て行く双子。

残された私達はそそくさと彼のパソコンが置いてある机まで行き、彼の操作の元、画面には二人の大きくなった視線があり、

[お金、どれぐらい入ってるのかな?]という声が聞こえてくる。


「さて、あの子達は鶏肉を買うまでの間に財布の中を見ると思うかい?」

『……本当、そういうの好きだよねー』

「この方がただ行かせるよりも面白いと思わない?2人がどれだけ俺の言う事を聞いてくれるのか、とかね」

『……まあそうだけど……ねえ、もし二人に何かあったらどうするの?』

「あの子達だって護身術を習ってるんだ。実践で使えなきゃ意味がないと思わない?」

『……臨也の意地悪』


確かに何もできない双子ではないので臨也の言っている事は正論なのかもしれないが、親としての彼は何を思っているのだろうか。

遅い時間のおつかい。

今の時代色々と物騒で―――殺傷事件だって起きているので本当に心配で心配で仕方がない。

それなのに臨也は余裕そうな顔で画面を見つめており、[コーヒーを貰えるかな]なんて言い出しそうだ。
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