折原家2
□大きくなったおつかい
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<大きくなったおつかい>
新宿 某マンション
愛子視点
『うーーーーん……』
「ママ、どうしたのー?」
「かんがえごと?」
『うん、ちょっとねー』
夕方の時間帯。
買い物に行き、いつものように冷蔵庫に買ったものを入れていたのだが、一番重要なものを買い忘れたような気がしてならなかった。
きちんとカゴの中に入れた筈なのだが、今見たらそれが見当たらず、首を傾げて悩んでいた。
―――今から買い直しに行く……?
―――でも、遅い時間だし臨也が怒るだろうなぁ……。
まだ帰ってきていないので急いで帰ってこれば問題ないかもしれないが、今日は連絡がなくいつ帰ってくるのか解らないので余計に不安になってしまうのだ。
だが、流石にまだ小学生の子供達に[買ってきて]なんて頼めないし、小さい時の失敗もあるのでなかなか言いづらい。
「おはなししてくれないとわかんないよっ、ママどうしたの?」
「おしえて?」
『……鶏肉を買い忘れちゃった』
「!からあげやるって言ったっ」
「!何でとりにくわすれちゃうのっ!?」
『ご、ごめん……ちゃんとカゴの中に入れたつもりだったんだけど……』
「もう、しかたないなぁ。あたしたちがおつかいに行って来てあげる!」
「えええ、ぼくも行くのー?」
「当たり前でしょっ、紫苑はあたしのボディーガードなんだもんっ」
「ボディーガードになってないよっ、かってなこと言わないでよっ」
「じゃああたしが、紫苑を守ってあげる!それでいいでしょー?」
「……それもやだ。ぼくが筑紫を守ってあげる。ぼく、男の子だもん」
―――ボディーガードなんていつ覚えたんだろう……。
私は行かせるつもりも、行ってもらうつもりもなかったのだが、二人は淡々と[わすれたのはとりにくだけ?]
と冷蔵庫を開けて中を見ており、なかなか行かせない、という言葉を挟むタイミングが見つからない。
「ママっ、お金ちょうだいっ」
「かいものに行って来てあげるから!」
『気持ちは嬉しいんだけどね?……もうこんな時間だし……危ないんじゃないかなって』
「……パパおこる?」
「とーと、おこるとこわいもんねー」
―――そういう事じゃないんだけどなぁ……。
二人が心配だから行かせられないと言ったつもりなのだが、双子はまた父親がうるさいのだと納得し、[だいじょうぶだよっ]と力強い言葉を吐き出した。
「あたしたちがちゃんとパパに言ってあげるから!」
「ママは安心していいよ!」
「……何を言ってあげるのかな?」
「「!」」
『い、意外と早かったね』
「まあね。俺もこんなに早くに帰れるとは思ってなくて、少し驚いたよ」
『そっか。……おかえり、パパ』
「ただいま」
胸を張る二人の背後には疲れて帰って来たであろう旦那―――折原臨也が立っており、私の位置からは見えるが、二人の位置からでは見えないので驚きながら何て言おうか考えている様だ。
―――さっきまでの勢いはどこに行ったの……。
父親なんて怖くない―――そう言わんばかりに言葉を吐き出していた双子だが、いざ本人を目の前にするとなかなか自分達が言いたい言葉が出てこないらしい。
「それで?今度は何を言ってあげるつもりだったのかな」
「……っ、あ、あたしたちでママのわすれもの、かいに行きたいなって思ったのっ」
「だから、とーとにおねがいしてあげるって!」
「……それは今日じゃなきゃダメなの?」
「「ダメっ」」
「すっごくだいじなものなの!今日のごはん、なくなっちゃう!」
「サラダだけになっちゃうよ!?とーと、それでもいいのっ!?」
話を振るように先程子供達が話していた内容を口にすれば、口をパクパクしながらも自分達の言いたい事を口にすれば、予想通り嫌そうな顔をしている臨也。