折原家2
□真夜中の出来事
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『臨也、ごめんね?』
「起きたら下に居た、っていうのは驚いたけど大方、君がどこかに行こうとするからついていった、って所じゃない?」
『……よくお分かりで』
「まあ自分の事だからねぇ。……それにしても君がこんな時間に起きるなんて珍しいじゃないか。何かあったの?」
『え。……ま、まあ?寝てたから仕方ないんだと思うけど……何かムカつく』
「?」
夢見心地に謝れば、彼は完全に起きてしまったのか、ゴロンと寝返りを打ち、私の方に顔を向け、
自分の行動について分析すれば、流石と言うべきか、殆ど当たっており、思わず苦笑してしまう。
そして、散々私に疑問をぶつけていたのに本人は全く覚えていない顔で問いかけてくる姿に何とも言えない腹立たしさを覚えたが、
寝ぼけていたのなら仕方ない、と割り切って説明をすれば納得したようだ。
「こんな時間にお腹が空くなんてあるんだねぇ。夜は一緒に食べただろう?それでも、お腹が空いたの?」
『うん、それで何か目が覚めて……寝ようと思ったけど寝れなくて……つい、ね?』
「まあいいんじゃない?君はもう少し太ってもいいと思うんだよね。……まあ、太り過ぎて動けなくなったとしても、俺がきちんと面倒を見てあげるから心配しなくてもいいけどね」
『どこまで私を太らせようとしてるのっ!?ていうか、そういう甘えはいらないからっ』
「残念。俺なしじゃ、外にも出られないような体になればいいのに」
『やめてっ!?』
こうやって冗談なのか本気なのか解らない事を言われるとどう対応していいのか解らなくなる。
本気で言っているのなら本気で抵抗しなければ折原臨也という人間に呑まれてしまうし、冗談ならば笑って[そういう事言わないでよぉ]と言える。
だからこそ彼の言葉はきちんと聞いておかなければ、どう言う状況で本気の言葉を吐き出されるか解らないからだ。
―――まあ、今回は結構冗談っぽいけど……。
―――構ってあげてなかったから甘えてるのかな?
色々とやる事があったらしく、外に出る事が多かったのでなかなか夫婦の時間、というものが取れず、
喋る時と言ったらご飯を食べる時と寝る時ぐらいだったので、その埋め合わせなのかもしれない。
「ねえ、次お腹が空いて起きたら俺を起こしてくれない?寝ぼけて下りるよりは君もそっちの方がいいだろう?」
『え、私下に下りるのも保護者同伴なのっ!?少し下りるだけだよ?!』
「喋り相手がいた方がいいだろう?だからさ、ね」
『いやいや、別にいらないしっ!家の中なんだから大丈夫だよっ!?』
今回は理由が解らなかったのでついて来た、というのなら何となく解るし、心配なのも解るのだがもし次があったとして臨也を起こす理由が解らない。
[俺を起こさないように静かに行ってね]となら解るし、起こしてしまった事は謝罪しかないのだが[起こしてくれない?]というのは全く理解できない。
だが、先程とは違い、本気だと言うのは雰囲気で伝わってくるのできちんとここは抵抗しなければならない。だが―――
「今日は良くても次は駄目な時だってあるかもしれない、暗い階段に足を取られて転んで動けなくなるかもしれない、色々な可能性があるんだから一人って言うのは許可できないなぁ」
というそれらしい言葉をつらつらと吐き出されれば[確かにそうかもしれない]と思えてしまうのが彼の話術なのだろう。
『……ちゃんと起きてもらわなきゃ困るよ?』
「分かってるよ。ちゃんと起きるからさ」
―――――――……
数日後 深夜
愛子視点
『……お腹空いた……』
もそり、と布団を動かし、何日か前に言われた通り臨也を起こす。