折原家2

□真夜中の出来事
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<真夜中の出来事>


新宿 某マンション 深夜

愛子視点


『ん……もう朝……?』


真っ暗な部屋の中。

ボーっとした頭で周りを見渡せば、旦那は気持ち良さそうに眠っているし、周りは暗く、子供達が起こしに来た様子もない。

何でこんな時間に起きたんだろう、そんな事を思いつつ、もう一度寝なおそうかと思ったのだが―――


『……お腹空いた……』


栄養を求めるかのようにお腹からぐう、と何とも間抜けな音が聞こえ、まさかこれで起きたのではないか、

そんな事を考えたが、今起きてもう眠れなかったら困るし、変な時間に眠くなっても困る。

空腹ぐらい我慢できる―――そう思って、縋りつくように大好きな人の背中に顔を近づけ、目を瞑ったのだが、空腹が邪魔をしてなかなか眠れず、これは本当に何か食べないと眠れないようだ。


―――水でも飲めば、どうにかなるかな……。


変な時間にご飯を食べると太る、というのは聞いた事がある情報なので、てっとり早く空腹を抑えるには程よい満腹感があればどうにかなる、

そう考え、旦那を起こさないようにゆっくりと起き上がり、コソコソと扉を開けようとしたのだが―――


「……どこ行くの?」


まるで起きていたかのようにハッキリとした声が背後から聞こえ、振り返れば暗くてきちんと顔は見えないが、上半身を起こした彼―――

折原臨也が座っており、声から察すると少しだけ怒っているかのようだ。


『お、お腹空いたから水を飲みに行こうかな、って思って……』

「……こんな時間に?」

『こんな時間に』

「……。俺も一緒に行っていいかな」

『別にいいけど……ただ、水飲むだけだよ?』

「俺も丁度喉が渇いてたんだよ。それなら理由としては完璧じゃない?」


私がこんな時間にベッドを抜け出す事が珍しすぎて素直に目的を話していても信じてもらえず、まるで[どこかに行くつもりだろう?]と言わんばかりだ。


―――そんなつもりないんだけどなぁ。


大好きな子供達がいる。大好きな臨也もいる。

そんな家を出て、私はどこに行くと言うのだ。信じてもらえないのは辛い所ではあるが、それだけ自分の事を大事にしていると思うとほんの少しだけいい気分だ。


『……臨也は心配性だなぁ』

「心配性ぐらいが丁度いいんだよ。変に放っておかれるよりはいいと思うけどねぇ」

『ま、まあね?……でも、寝なくていいの?明日も仕事なんでしょ?』

「誰かに会う訳でもないし、急ぎの仕事もないから困るのは波江さんぐらいさ」

『自分だけじゃない所が臨也の悪い所だね。波江さんを巻き込んだら本当に見放されるよ?』

「愛子達を気に入ってる彼女が、見放すとは思えないけどね。……まあ、俺の場合はとっくに呆れられてるよ」

『……それはそれで問題なんじゃ……』


子供達を起こさないようにこっそりと扉を開けて外に出た。

暗くて少し足場に困っていると臨也がどこからか取り出したリモコンで明るさを調整してくれ、薄暗いが先程よりは彼の表情や足場などが見やすくなり、お礼を言いつつ階段を下りる。


仕事仲間なのだからそういった事は信頼関係というものが必要なのではないかと思うのだが、

既に私と臨也が知り合った時と同じぐらいの時間を秘書である波江さんも過ごしているので彼のパターンみたいなものは掴んでいるだろう。

その上で彼の態度、言葉に対して呆れており、口癖のように[よくコイツに付き合っていられるわね]と私達が言われるのだ。
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