折原家2

□思い出話
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まあ大人になってからやっと直る人もいるので、一概にそうだとは言えないが。

それからの臨也は二人のご飯について徹底的に見張り、私が子供達を甘やかさないかといつもは付けない監視カメラすら持ち出し、

ちょっとでもこちらが甘やかそうとすると[二人の為にならないよ]と電話がかかってくる。

そうなってくると私もどこでどう彼に見られているのか解らなくなり、二人が[ふぉーくがいいっ]と言っても、ダメと言えるようになった。


「ママもパパもいじわるするぅ……」

「なみえしゃん、ママととーとにいじわるしないで、っていってー?」

「それはできないわ。貴方達の父親にはキツク言われてるのよ、甘やかすなって。だから無理よ、諦めなさい」

「おはし、つかえなくてもごはんたべられるもんっ、だからおはしいらないのにさぁ……」

「なんで、おはしつかえないとパパおこるのー?ママもずーーーっとだめっていうし」

「貴方達の為よ。……それにあれだけ貴方達に甘い父親が口を酸っぱく言うって事はそれだけ意味がある事だと思うわ」

「「…………」」


私達に怒られ、毎日のように箸の練習をさせられた双子は愚痴のように彼の秘書である波江さんに不満を漏らすが、

臨也の想定内だったらしく、既に彼女にも手を打たれ、まだ小さい双子には成す術もなくて―――口を尖らせながら納得がいかない表情をしていた。


―――憎くて言ってるんじゃないんだよ……?だから、頑張ろう?


悪役、というのか愛する子供達に[ママにいじわるされた]と言われるのはやっぱり心に来るものがあるし、

できる事なら隅々まで甘やかして[双子の味方]でありたいのだが、それを許してくれないのが父親である臨也だ。


―――臨也もきっと……心の中では傷付いてるよね……?


「そりゃあね。嫌だ嫌だって言ってる子供に無理矢理箸を持たせて、ご飯を食べさせようとするんだよ?少し間違えれば、虐待だと思うし、俺だってやらせたくはないさ。

……まああの子達が素直にちゃんと箸を持って食べてくれればそれでいいんだけどさ」


思った事を口にするとはぐらかさずに素直に答えてくれて―――やっぱり臨也も私と同じ気持ちでいてくれた事を嬉しく思った。

そんな親の気持ちなんて二人にはまだ理解できなくて―――自分達の持ちやすい食べ方で魚を食べようとするので臨也はいつものように怒ると―――


「もうごはんいらないっ!」

「パパがいっつもおこるから、たべたくないっ!」


と言いながら立ち上がり、走って自分達の寝室へと走っていってしまい、残された私達はポカンとしつつも、

数秒後には臨也の疲れた表情が見え、小さな声で[上手くいかないものだねぇ]と呟いていた。


『……そうだね。こういうのって本当、上手くいかない……』

「あの子達の為、って言うのは……俺達の我儘なのかもしれないねぇ」

『……そうだね』


何も言えなくて―――ただ彼の言葉に同意した。

何事も上手くいかない事ぐらい分かっている筈でも、それでもどうにかいい方向へと持って行こうとするが、現実は難しくて―――子供達のストレスになっていたのかもしれない。

それならばもっと双子のストレスにならないように私達が調節してあげればいい。父親が怒る事がストレスに繋がるのなら、私が優しく言い聞かせればいい。


『……ねえ、一回二人に食べやすい方で食べさせて、ゆっくり教えていってみない?怒るんじゃなくて、こうやって食べる方が綺麗だよ、って』

「……君のやりたいようにやってみなよ。俺はもう疲れたからさ」


疲れた顔で、疲れた声を出す臨也の頭を優しく撫でると[どうしたの?]と問いかけてくるので[頑張ったご褒美]と笑うと一緒になって少しだけ笑ってくれる臨也。
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