折原家2
□思い出話
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男の人はどれだけ自分に子供ができても、あまり[自分の子供]という自覚がないとテレビで前に見たが、彼はそういった人とは違い、
きちんと私以上に真剣に双子の親として子供達と接している。
―――どうしてなんだろう……。
確かに彼は人間が好きだ。
私だって観察対象だし、子供達も例外なく臨也の[愛すべき人間達]として含まれているのかもしれないが、
それを抜きにしてもこうやって箸の使い方やら歯ブラシの練習やら頭を洗う練習をさせたりと何かと面倒見がよく、それだけの理由とは思えないのだ。
―――妹達がいるから、なのかな……?
歳の離れた妹達がいるからこそ、子供達の[自分のやり方]でぐちゃぐちゃにしている事が気に入らないのかもしれない。
まあ後は私が子供達に甘すぎて[俺がやらなければ二人の将来に関わる]なんて思ったのかもしれないが。
「もちにくいよぉ、パパっ!これやっ」
「こっちのほうがもちやすいもんっ」
「練習だって言ってるだろう?それができなきゃ、そのうち他の友達に笑われるよ?それでもいいのかな」
「……やーだー。でも、やだもん」
「ママ、ふぉーくっ、ふぉーくがいいっ」
「ママに頼ろうとしても無駄だよ。ママはパパの味方だからね、ね?ママ?」
『……っ、そ、ソウデスネー』
―――怒ってる、すっごく怒ってる……。
私が子供達を甘やかしている事は彼には秘密にしていたのだが、娘の一言によって自分が普段どのように子供達にご飯を食べさせているのかバレてしまい、
ニコリと優しく口元を緩ませているが目は[何やってるの?]と言わんばかりにこちらを見つめている。
目を逸らしつつ、同意すると双子は[なんでー?]と私と父親に抗議しており、母親が自分達に味方してくれなかった事が気に入らなかったらしい。
「何で、じゃないよ。フォークは一切禁止、お前達はこれから箸を使ってご飯を食べる事。解ったかい?」
「ええええっ、パパがいじわるするぅうう」
「とーと、いじわるしちゃだめなんだよー?いじわるは、どろぼーのはじまりだっていってたよっ」
「それは嘘つきは泥棒の始まりだろう?意地悪なんて言ってないじゃないか。これからのお前達の為に言ってるんだ。そこは潔く諦めて練習する事だね」
「「まぁまぁ……」」
『……ごめんね、二人共。が、頑張って!』
本当なら助けてあげたい。箸なんて綺麗に持てなくても、綺麗に持てない人なんてたくさんいるんだからと言ってあげたい。
だが、こうやって臨也が懸命に教えているのに二人が使えなければ[あそこは箸の使い方も教えていないのか]なんて影で言われるかもしれない。
彼が[情報屋]だからこそ、[折原臨也]だからこそ、そう言った目はかなり影響しやすいだろう。
―――マイナスの面で見られる事が多そうだもんね……。
どんな職業かも分からない、本当に働いているかも分からない、池袋では毎回のように天敵である平和島静雄と喧嘩している―――
あまり知らない人からしてもそんな子供達をよくは見えないだろう。だからこそ二人にはきちんとしてもらいたいのかもしれない。
―――二人のフォーク、隠しておかなきゃ。
『……でも、ケーキとかの時はどうするの?食べにくくない?』
「スプーンで食べればいいじゃないか。別にフォークじゃないと食べれない、ってわけじゃないだろう?」
『じゃあ、スパゲッティの時は?』
「それこそ箸で食べても問題はないと思うよ?……まあ啜って服とか汚しそうだけどさ」
『……徹底的だね』
「それぐらいしなきゃ、いつまで経っても二人は変な持ち方で料理を食べ続けるよ?君の時は素直に使ってくれたからやりやすかったけどさ」
どこかで甘やかしていたらそれに慣れ、厳しい方を[面倒な事]として認識してしまう。
小さな時だからこそ、まだ間に合う。