折原家2
□思い出話
1ページ/5ページ
<思い出話>
新宿 夜 某マンション
愛子視点
「二人共、成長したねぇ」
「「?」」
「……いや、こっちの話だよ」
「パパ、ひとりごと大きいよ?」
「とーと、ママがかまってくれないからさみしいんでしょー」
「そんな事はないさ。きちんとママはいつも通り俺に構ってくれるし、話し相手にもなってくれるよ?
……ただ、こうやって毎日の事でも少しずつお前達が大きくなってるんだな、って事を実感するんだ」
夜ご飯の時間。
それぞれのペースでそれぞれ食べ進めていると旦那がポツリ、と独り言を呟いた。
それを聞いた双子は首を傾げながら彼の方を向くが、あまり意識せずに飛び出した独り言だったようでニコリと笑いながら話を逸らそうとしたのだが、
注意するようにからかうように父親に向かって口を開けば、小さく笑いながら今の風景について口を開く。
―――……確かに、臨也の言う通りかも……。
―――――――……
数年前 夜 某マンション
愛子視点
『二人共、ご飯だよー』
「「はーいっ」」
まだ小さかった頃。
二人は仲良くリビングとして使っている真ん中で自分達の好きなおもちゃで遊びながら父親と一緒にご飯ができるのを待っており、
時々[ママ、まだー?][おなかすいたーっ]という声が聞こえたが生のまま食べさせるわけにはいかないので[まだだよ、もうちょっと待ってね]と言い聞かせる事数十分。
やっとご飯が出来上がったので二人と旦那を呼べば、一足先に、とばかりにタタタっと走ってテーブルの前に座り、遅い父親や母親を待ちかねている様だ。
「いただきます」
「「いただきまーすっ!」」
『いただきます』
「……ほら、箸をちゃんと持たないとダメだろう?フォークじゃないんだから刺すんじゃなくて切るんだよ」
「むずかしー」
「とーと、きってー」
「それじゃあ意味ないだろう?ほら、ここをこう持って……これで食べるんだよ」
まだ箸が上手に持てず、食べるものがあちこちに散乱し、それでも二人はそれを食べようと箸をフォークのように突き刺し、
美味しそうに頬張る姿に旦那―――折原臨也は双子に近付いて箸を練習させるようにしている。
箸の使い方、というのは育ちが一番出る場所であり、他の人の前で変な持ち方をしていると[箸の持ち方すら教えてもらえなかったのか]と思われてもおかしくない部分だ。
勿論私もその中の一人であり、ここに来た時には臨也から正しい箸の持ち方を教えてもらったものだ。
―――子供達が生まれる前までに直せてよかった……。
もしそのまま彼と結婚し、こうやって子供達に箸の使い方を教える立場になった時に[ママもおかしい]と言われたら母親失格のような気がするので臨也には感謝しなければならない。
「もちにくーいっ」
「いやいやっ、こっちのほうがもちやすいよっ」
「そのうち慣れるからさ、それで一度食べてみてよ」
「おにくおちちゃったぁ!」
「パパ、たべさせてーっ」
「こういう所は甘やかさないよ。ほら、もう一度やってごらん」
彼の教育は何度も何度も教えるものであり、成功しなければ臨也は褒めたりしないし、妥協もしない。
それが子供達の為にならないと知っているからであり、こういった教育熱心な彼を見ていると自分はかなり双子に甘く接しているんだな、と思えてしまう。
―――食べれない時はフォークにしてるし……ダメだなぁ。
臨也がいない時、[いやいやっ][たべれないよぉ]と言われたら諦めてフォークを出す私とは全然違うのだ。