折原家2
□子供達の成長
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なので彼―――折原臨也が心配するのも無理はないし、私も心配しながら二人が帰ってくるのを今か今かと待ちわびている。
「た、ただいまー……」
「ただいまー……」
「……二人共、どこに行ってたの?」
それから数十分後―――二人は申し訳なさそうな顔をしながら玄関の扉を開き、コソっとバレないように帰るかのように、それでもきちんと[ただいま]という所は変わらない。
その声で臨也は無言で立ち上がり、二人がリビングへとやってきた瞬間、僅かに冷たい目で双子に問いかけた。
―――そ、そんなに怒らなくても……。
心配なのは解る。
実際、私もどうしたんだろう、怪我とかしてたりしないかな、とか何か事件に巻き込まれたのでは―――
なんて思ったりもしてしまったが、二人が無事にこの家に帰って来てくれれば怒るつもりはなかった。
だが、彼はそれだけでは納得できないのか、いつもなら双子の目線に合わせて問いかけたり、話しかけたりするのだが、そう言った事はせずに矢が刺さるかのような言葉を投げかけた。
「俺と約束したよね?暗くなる前には帰るって。外見てごらんよ、もう真っ暗だよ?こんな時間まで何やってたの?友達と遊ぶのはいいけど、時間を考えなよ」
「……っ、とーとにはかんけいない!小学3年生は大人なんだからっ」
「おっ、大人はくらくなってもあそんでいいんだよっ」
「……たった8歳のガキが何言ってるの?8歳なんてまだまだ子供同然さ」
「ちっ、ちがうもん!だって、言ってたよ!小学3年生は大人だってっ」
「だから外であそんでもいいのっ!」
「ちょ……」
臨也の言葉に耐えられなくなったのか、それともただこの雰囲気が嫌で逃げ出したくなったのか解らないが、
双子は捨て台詞のような言葉を吐き出した後、自分達の部屋に向かって走っていってしまい、不意を突かれた事で父親は追いかける事もできずに溜息を吐き出す。
『……反抗期?』
「……それは流石に早すぎるんじゃないかな。……複雑な歳になった、って事じゃないかな」
『そうなの?』
「あのぐらいの時期になると俺達の意見を素直に受け入れたくない、っていう気持ちが強くなるんだよ。
だから、俺の約束も破ってもいいじゃないか、自分達の意見を主張したっていいじゃないか、っていう気持ちになる。
けど、あの子達はそういった子供達に影響されてやってる所があるから他人の言葉でしか自分を主張できないんだ。
言ってただろう?[小学3年生は大人だって言ってた]って。それが証拠さ」
『……なのに怒ったの?』
「じゃあ君は怒らずに[怪我がなくて良かったね]って言うのかい?たまたま運が良かっただけかもしれないのにさ」
『そ、それは……』
彼の言ってる事は間違っていない。
今日は運が良く、変な人に遭わずに済んだかもしれないが、明日は明後日は解らない。
ほんの少しの油断が、[約束を破った]だけのちょっとした非日常が、外にいる子供達に襲いかかろうとしているかもしれない。
―――でも、難しいよね……やっぱり。
そういう時期ならば仕方ないかもしれないし、もっと彼の態度よりもいい対象法もあるかもしれないが、情けない事に私はどうしていいのか解らないのだ。
自分がお腹を痛めて産んだ子供達が、大人に近付こうとしている。それはとても嬉しい事だし、ちょっと寂しいが、それでもいつかはこういう日が来てしまうのは予想していた。
それでも―――実際に突然、彼との約束を破って、遅くまで遊んでいた子供達を見ても、どうしても実感が湧かないのだ。