折原家2
□子供達の成長
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<子供達の成長>
新宿 夕方 某公園
視点なし
「あ!もうこんなじかんだね、ぼく、お家にかえるね!」
「あたしもー!」
「ええええっ、もうちょっとあそぼうよー!小学3年生はこどもじゃないんだよ!」
「ちょっとぐらいおくれても、お母さんもお父さんもおこらないよ!」
男女数人の小さな子供達が集まって公園で走り回ったり、遊具で遊んだり―――少なくなってきている遊具を後悔しないよう使うかのように、
ブランコに乗って遊んでいると外は薄暗くなっていき、近くに見える時計は両親に決められた時間を過ぎようとしていた。
このままではあの口うるさくとも優しい父親に、優しくとも怒る時は怒ってくれる母親に怒られてしまいそうなので
慌ててブランコから降りて出口に向かおうとしたのだが他の子供達は二人に不満の言葉をかけた。
早い子は少しずつ大人への道を歩いており、親への反発、自分はもう子供ではないという複雑な気持ちを抱え、少しずつ階段をのぼっているのだが、
男女の双子である―――折原筑紫と折原紫苑はまだまだ甘え足りないかのように両親の言いつけを守り、手伝いをしたり、
一緒に買い物に行ったりとあまり成長が見られなかったのだが、早い子供と一緒にいる事によって少しずつ変わろうとしていた。
「でもぉ……」
「パパとママにおこられちゃう……」
「ちょっとだけだよ!ちょっとだけ!」
「じゃあ二人はもうおれたちとあそびたくないのかー?」
「ううう……」
「あそびたい、けどぉ……」
「わたしは筑紫ちゃんとあそびたいっ」
「おれもっ!」
「みんなあそびたい、って言ってるのに二人ともかえるのか?そんなことしたらもうあそんであげないぞっ」
「……じゃあ、ちょっとだけ……」
「紫苑っ、パパがおこるよ!」
「だってだって……っ、ぼくもあそびたいもんっ!筑紫だけ先にかえればいいじゃんっ」
「……っ、あ、あたしもあそぶっ」
――――――――……
同時刻 新宿 某マンション
愛子視点
「ねえ、あの子達まだ帰ってこないの?」
『私に聞かれたって解んないよ……もうすぐ帰ってくるんじゃない?』
いつもなら笑顔で帰ってくる双子が約束した時間に帰って来なくて―――先程から旦那がウロウロしながら、
それでも心配しているという姿は見られたくないのか、冷静な顔をしながら数回目の問いかけを私に投げかけてくる。
「……何か事件に巻き込まれてなければいいけど」
『そっ、そういう不安になる事言わないでよっ……私も心配になってくるじゃんっ』
「そう言われてもねぇ。今の時代、何があるか解らないから」
『……だ、大丈夫だよ!ちょっと友達との話が長引いてるだけだよっ』
「……それならいいけどさ。突然帰ってこないとなると不安になるよね」
『……うん、そうだね。いつも通りだったし……』
行ってくるね、と笑顔で手を振って学校に向かって―――少しずつ大きくなってきているので時間を決めて友達と遊ぶようにと父親と約束をして、一度もそれを破った事はなく、
ほんの数分遅れる事はあっても、きちんと[おそくなっちゃったっ]と言いながら帰ってきてくれるので心配はしていなかったのだが、
こうやって刻一刻と約束した時間に帰ってこないとなると旦那ではないが、心配になってくる。
―――無事だといいんだけど……。
ニュースでも、知らない男の人が声をかけてきて攫ってしまい、何日も監禁した、とかそのまま殺してしまった、なんて事件も日本のどこかで起きているのだ。