折原家2

□彼女がいない日
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注意書き

[夜の営み]の続きの話です。

この話一つで解るようにはするつもりですが、一緒に読んでいただければ、解りやすいかと思います。


<彼女がいない日>


新宿 某マンション

愛子視点


「パパ、いなくなっちゃうの……?」

「やーだーっ、行かないでぇ……」

「……ごめんね、お前達。ママと波江さんのいう事をきちんと聞くんだよ」

「「やーだぁあああっ」」

「…………」


旦那が一人旅に出る、と言ってからの彼の行動は早く、着るものや必要なもの、仕事なのか趣味なのかに使う為のもの、

持ち運びしやすいパソコンの用意など、本当に行くつもりだったんだと解るような速さで準備を進め、ついに当日となった。


子供達は最初、父親にその話をされた時、[だいじょうぶっ][いい子にしてるっ]とニコニコした顔で受け入れていたのだが、

当日となり、キャリーケースを持った父親が現れた瞬間、そんな話聞いてないとばかりにしがみ付き、わんわんと泣き始めた。

まさかの展開に旦那は困っているらしく、子供達と同じ目線となってもう一度[ごめんね]と言いながら抱きしめている。


―――心が痛いよね、あれ……。


大事な大事な、とても大切な子供達が自分の為に大泣きしながら[行かないで]と言っている。私の時はまだ子供達もいない時だったので旦那―――

折原臨也を説得すれば良かったが、今回はまだ小学生の子供達にしがみ付かれながらの旅行なので、彼にとってはかなり負担が大きいだろう。


「たった3日じゃないか、すぐ帰ってくるよ。だからさ、そんなに泣かないでよ」

「やだやだぁ……っ、パパもいっしょじゃないと、やだぁぁあ……っ」

「やーだーっ、……おしごとやめちゃえばいいんだっ、ねー?おしごとやめて、ぼくたちといっしょにあそぼ?」

「……そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさ、パパにも用事ってものがあるんだよ。だから、ね?」

「知らないもんっ、パパのようじなんて知らないっ」

「こどもだからわかんないもんっ、とーとのわからずやぁああっ」

「……。……見てないで、助けてくれない?」

『無理っ、自分で蒔いた種なんだから自分でどうにかしてくださいっ』


ぎゅうぎゅう、と彼の服を握りしめ、離さないとする子供達の姿に説得を試みるが、やはり無駄で―――

困り果てている臨也の顔をニマニマした顔で見ているとこちらを向き、助けを求めてきた。だが、私だって本当は行ってほしくない。

臨也が頼むので仕方なくそれを了承しただけなので、助けるつもりも、子供達を引き剥がす事もしたくない。


―――私だって我慢してるんだからっ!


「良かったわね、大事な子供達が自分と離れたくない、なんて言ってくれて」

「……波江さん、君も反対なの?」

「何か仕事が振られるわけでもないし、家事は愛子がやってくれるから貴方がいなくても私は一向に構わないわよ」

「酷いなぁ。子供達はこんなにも俺を必要としてくれる、って言うのに」

「最初のうちだけよ。貴方が帰ってくる頃には貴方の居場所はないかもしれないわね」

「3日間の間に何があるって言うのさ。……二人共、パパがいなくなったら寂しいよね?」

「ひっく……さびしい……行かないで、パパ……」

「いやー……ひっく……とーと、行っちゃいやっ」

「ほら、こんなにも泣いて俺に行かないで、って言ってるんだよ?あるわけないじゃないか」

「それは解らないわよ?子供って急に成長するから」


―――そんな怖い事、言わないであげてっ!?


しがみ付いている子供達を抱きしめながら秘書である波江さんと話をする臨也。

まるで不安を煽るような波江さんの言葉に彼がやっぱり止めると言ったら―――そう考えた所で、止めてくれた方がいいのか、と気付き、彼女の作戦なのだと理解する。
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