折原家2
□whiteday
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「……君達ってよく写真を撮りたがるけど、そんなに写真が好きなの?」
『若い人達が何を考えて写真を撮ってるかは知らないけど……忘れずにとっておきたいんじゃないの?』
SNSにはたくさんの画像の投稿があって―――自分が作った料理から、友達とどこかに旅行に行った事、身近な話題まで様々で、時々こんな人がいた、
こんな事をしてる人がいた、と晒すように投稿している人間もいるが、彼らは何を思い、何故そんな事をしているのか、そう考えると興味深い。
あまり俺自身が写真を撮ったりする事をしないので解らない感情なのかもしれないが、都市伝説を見たら写真、
化物を見たら写真、カツアゲのような事をしていたら写真―――彼らはそうやって自分のフォルダーをいっぱいにしていく。
―――どこで見られてるのか解らないっていうのはダラーズがなくなっても変わらないねぇ。
一つの掲示板があったからこそ、そこに情報が集まっていたが、なくなった今は様々な所に投稿し、自分と言うものを見てもらう事に必死になっている。
俺から言わせて貰えば、例えその写真が有名になったとしてもその本人が有名になったわけではないし、知らない人間からしてみたら結局[知らない情報]、[知らない人]なのだ。
「それは君も同じかい?」
『うん、一緒だよ。後で思い返してこんな事したなぁ、って思いたいもん』
「…………」
「パパ、おしゃしんきらーい?」
「ぼく、おしゃしんすきだよ!」
どこで話を聞いていたのか、二人はそう言いながら話に加わり、こうなれば俺の敗北は目に見えている。
俺の立場は強そうに見えて、全くそうではなく、殆どが彼女の思い通りになっていると言っても過言ではないだろう。
『パパ、写真好きじゃないんだって。だからお返しは別に考えるよ。……何がいいかなぁ』
「何で―?」
「パシャ、ってとるだけだよー?パパ、何できらいなの?」
「好きに理由がないように、嫌いにも理由はないんだよ。お前達だって好きな料理に全部理由をつけろ、
って言われたら困るだろう?……まあ、美味しいからって言いそうだから聞かないけどさ」
「何でわかったのーっ!?でも、おいしくなかったらすきじゃないでしょー?パパ、おしゃしんきらいになっちゃったの?」
「あっ、わかった!ママとおしゃしんとるの、はずかしいんだ!」
「そっか、ママがかわいいから、パパ、はずかしいんだね!パパ、ママのことだいすきだもんっ」
『っ……ハッキリ言われると恥ずかしいんだけど……』
可愛い可愛いと子供達に言われ、恥ずかしそうな顔をする愛子。
写真と言うものは良くも悪くも残り続ける。SNSでも誰かが拡散すれば本人が消してもその写真は残り続けるし、
どこで誰が見ているのかも解らないので気付いたら軽い気持ちの写真が1万人以上の人間に見られていた、なんて事にもなりかねない。
彼女がSNSに投稿するとは思えないし、やっていないのは知っているのでそういう点ではいいのかもしれないが、それでもやはり写真というものは好きにはなれない。
何度か隠し撮りされていた事もあるし、その写真を何に使われるか解らないので、いい思い出はないのだが―――
二人は勝手な妄想を繰り広げ、[パパ、ファンクラブとかあった?]などと聞いてきた時は育て方を間違えたかと思った位だ。
「どこでそういう事を学んでくるんだい?」
「学校のともだちがおしえてくれるよ!ファンクラブとかー、オーディションとか!」
「オーディションっていうのにごうかくするとげいのうじんになれるんだよね!」
「なれるかもしれないけど、そこから大変だと思うよ?自分を売って行かないといけないんだから」
あの世界の事はあまりよく調べた事はない。
色々な感情が渦巻き、テレビで見ている顔と仕事ではない時の顔は違うのかもしれないが、それはどんな人間にもある事なのでああいう世界に限った話ではないだろう。