折原家2
□whiteday
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―――頑張られても困るんだけどね。
そこまで成績が悪い方ではない双子。
なので俺が適当に話した内容ですら二人なら簡単に乗り越えてしまいそうな気がして―――
もう少し難しい内容にしておけば良かったかな、と思いつつ、彼女の方を見れば[どうかしたの?]と首を傾げて問いかけてきた。
「君はこういう部分では昔から何も変わらないな、って思っただけさ」
『?……ああ、うん。そうだね……パパがいっぱいプレゼントしてくれるから欲しいのが無いって言うのが本音なんだけど』
「君が欲しがらないからさ。俺が毎回どれだけ悩んで君にプレゼントしてると思ってるの?もう少し子供達を見習ってくれると嬉しいんだけどなぁ」
言い過ぎるのも良くないが、言わなさすぎるのも困るというものだ。
気付いてあげられるものなら気付いてプレゼントできるが、
大体のものは買い替えたし、彼女や優秀な秘書が大事に使ってくれるので長持ちしており、毎回のように買い替える事がないぐらいなのだ。
前にミキサーが欲しいと言うのでそれを買い与えたら次の日から試すように果物を買ってきて
子供達にジュースを作ってあげている姿もあれば、どうやったら俺に野菜を食べさせられるのか実験のように野菜をミキサーに入れている姿もあった。
まあその殆どは俺に飲まれず、自分で処理するように飲んでいたが。
『そう言ってもさぁ……欲しいものってそんな簡単に見つからないんだよ?考えてる間にパパがプレゼントしてくれるし……今年のお返しはなし、って事でいいんじゃないの?』
「それは俺が気に入らないからダメだよ。……ああ、一応言っておくけどチョコのお返しはなしだからね」
『なーんでーっ、そっちの方がすっごく嬉しいんだけど!』
「食べたらなくなるものなんて、最初からプレゼントしてくれなかったのと同じじゃないか。それよりも手元に残ってた方が思い出すだろう?」
『私、思いっきり手作りチョコでしたけどっ!?』
「俺はいいんだよ、覚えてるから。でも君は忘れるだろう?俺がいつ、どのタイミングでプレゼントしたのか、とかさ」
『……。……多すぎて覚えてないです』
「そうだろうね。だけど、俺から貰った、って事は覚えてる、そうだろう?君が自分から何かを欲しがることなんてそうそうないからね」
出会ってからここまでの間に、俺はどれだけプレゼントをしてきただろうか。
記念日から何でもない日、ちょっとした貰い物―――食べた物も合わせたらかなりの数になるかもしれないが、その一つ一つに思い出がある。
どうやって彼女にプレゼントしようか、どうしたら彼女は驚いてくれるだろうか―――そんな事を考え、慎重に慎重に選んだものを愛子は宝物として大事にしてくれる。
それが何よりも嬉しいのだ。口には出さないが、折原臨也の言葉だとは思えないかもしれないが、それでもこれが本音だ。
―――……まあ、死ぬ前にならいいかな。
―――それがいつになるかは解らないけどね。
『そう、だね。パパから貰ったものは……全部、私の宝物だから。パパは何にも思ってなさそうだけどっ』
「そんな事ないさ。……それで?今年は何が欲しいの?」
『だから欲しいものなんてないっ……あ、そうだ。お返しって何でもいいんだよね?』
「?形に残るものなら何でもいいよ。後は俺ができる事なら、ね」
『じゃあ、パパ。私とデートしよっ、それで携帯でたくさん写真を撮るの。どう?形は残るし、私もパパも楽しい思い出ができる。良いと思わない?』
―――時々、彼女はどんな事を考えてるのか解らなくなるよ。
10年以上一緒にいて解っていた筈の彼女の事。
だが、本当の意味で一人の人間の全てを知る事なんてできないのかもしれない―――そう思った瞬間だった。