折原家2
□ばれんたいんでー
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―――全部、なんて流石に悪いもんね。
―――それに……子供達も私に負けず劣らず、甘いの好きだし……。
こういう所をどうして子供達は似てしまったのだろうか。
何でも美味しそうに食べてくれるのは親としては嬉しい事だが、こうやってお高いものが目の前にあり、
どれかを選ばなければいけない時に子供達も好きだから、と考えなければいけないのが、悲しい所でもある。
じゃあ私4つ食べる、なんて我儘を言っても好きではない臨也からしてみればありがたい事だと思うので何も言わないかもしれないが、私には二人の子供がいて―――
その子達も甘いものが好きで、もしここに双子が居たら、[あたしもこれがいいっ][ぼくもこれがいいっ]と喧嘩になっていたかもしれない。
そういう点では残念な所でもあるが、甘いものばかり食べたり、食べさせていたら将来、糖尿病になってしまうかもしれないし、虫歯にもなってしまうので加減が必要なのが、難しい所だ。
―――好きなものは好きなだけいっぱい食べたくなっちゃうんだよね……。
『……じゃあこれとこれ、貰うね。臨也もちゃんと貰わなきゃダメだよ?折角自分が貰って来たんだから』
「……解ってるよ。感想を聞かれた時に答えられなかったら困るからね、少しぐらいチョコの勉強でもしておくよ」
―――――――……
2月11日 某マンション
愛子視点
―――あんないいチョコを貰ったのに、お返しとかしなくていいのかな……?
大事に大事にチョコを冷蔵庫で冷やしながら一つずつ食べているのだが、あんなにいいものを貰ったのに何も言わずに食べただけでは何だか申し訳なく思えてきてしまった。
相手は粟楠会なので私一人に何かを思う事はないだろうし、一応情報屋の臨也の妻として認知していても、私は一般人で―――関わるべきではないと向こうも思っているかもしれない。
なのでそう考えても[返さなくてもいいよ、ね?]という結論に至り、今まで来たのだが、万が一にでも向こうがお返しを待っていたらどうしよう、なんて思ってしまった。
臨也がどうやってあのチョコを貰って来たのかは解らないので、本当に余り物で、誰も食べず、あっても困るからとりあえず懇意にしている情報屋に渡せばいいか、
なんて考えたのかもしれないし、恩を売っておけば何かに使えるかもしれないとか思ったのかもしれない。
そうなれば、いつまでも返さないのは悪いし、ホワイトデーがまだあると言っても、いつ渡せるかなんて解らない。
―――お、お高いチョコ、返した方がいいのかな……!?
「ママ、ママっ!今日、チョコつくるんでしょ!?生チョコ、つくるんだよね!?」
「ぼく、ちゃんと手、あらったよ!早くつくろうよ!」
『う、うん……作るのはいいんだけどね?……うーん……』
「「??」」
『……二人とも美味しいチョコ、パパから貰ったでしょ?そのくれた人にお返ししたいと思うんだけど……どう思う?』
「おかえし、した方がいいとおもう!」
「だって、せっかくとーとに、ってくれたのにおかえししなかったら、もうとーとにチョコくれなくなっちゃうかもしれないしー」
『……そう、だよね……。やっぱりそうだよね!』
私はいつでも良かったのだが、子供達が休みの日が今日しかなくて―――私が考え事をしている間にも、簡単に作れる子供達用のチョコセットを持って来てこちらを呼んでいるので、
相談するようにポロっと言葉を吐き出せば、何の躊躇いもなくそう言って笑うので、一瞬で心のもやもやが消えていくような錯覚に陥った。