折原家2
□ばれんたいんでー
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―――まあ、あんまり向こうも関わって来ないのが救いだけどね。
臨也の妻だからと関わって来られるとこちらとしても困るのだが、一度友達の誕生日プレゼントを選んでくれ―――と言われたぐらいで、それ以来全く会っていない気がする。
どれだけ会わない人でも、どれだけ相手が危険な人でも、関わってしまい、
名前と顔が一致する[知り合い]になってしまったら、あの人は元気にしているだろうか、と思ってしまうのは自分の悪い癖かもしれない。
まあ臨也からしてみたら私は彼との出会いで1回ほどしか会っていない事になっているので、赤林さんに対して何を思っているかなんて気付かないとは思うが。
「毒とかは入ってないと思うし、欲しいなら君にもあげるけどどうかな」
『臨也が貰ったんでしょ?それなら臨也が……ああ、そっか……』
「察しが良くて助かるよ」
数種類のチョコの箱を紙袋から取り出し、並べながらそういう臨也に私が貰ったら悪い、と言おうとしたのだが、
彼が甘いものをあまり好んでいない事を思い出し、一人で納得するとホッとした顔をしながら[どれがいい?]と改めて聞いてきた。
『うーん……あれ、これって確か結構お高いチョコだよね?テレビでやってたの、見た事ある……流石粟楠会……』
改めて臨也が取り出したチョコの箱を見れば、どれもテレビで紹介されていたり、ネットなどでブランド品として売られているのを見た事あるようなものばかりだ。
―――こんな機会、二度とないかも……。
自分でブランドのチョコを買おうとは思った事がないのでこういう機会は大事にしなければいけないし、
彼のおかげでこうやって美味しいチョコが食べられるのでいつも以上に感謝しなくてはいけない。
―――いつもだってちゃんと感謝してるけどね?
『迷うなぁ……このミルクもいいし、ビターも気になる……っ!
あ、これすっごく甘くて美味しいってテレビでやってた……!あ、これって確かナッツが入ってるんだっけ……なーやーむー』
「……そんなに悩む事かな」
『悩むよっ、だってお高いんだよっ!?こんなの自分で買って食べようなんて思わないしっ!』
「欲しいのなら俺がいつでも買ってあげるのに」
『それとこれとは話が違う!しかも、臨也の場合は貰う側でしょっ!……まあ、私が買う事になったら臨也に買ってもらったっていうのと同じかもしれないけど……』
独り言のようにあれこれとチョコの箱を手に取って選んでいる私を見て、臨也は何とも言えない表情をしながらこちらがどうしてそこまで悩んでいるのか理解できないようだ。
甘いものが好きではない臨也からしてみたらどれも同じ[チョコ]という分類になってしまうので、それは仕方ない事なのかもしれないが。
「それならいいじゃないか。今度バレンタインのイベントがあるんだろう?
その時に食べられなかったチョコでも何でも買えばいいじゃないか。それに……俺は一言も[一つだけあげる]なんて言ってないよ?好きなものを好きなだけ持って行けばいいさ」
『っ!臨也本当っ、大好きっ!めっちゃ好き、愛してるっ!』
「……あまり嬉しくない告白だね」
悩んでいる私に彼は私が喜ぶ提案をしてくれて―――臨也が甘いものがそこまで好きじゃなくて良かった、
と言う意味を込めて言葉を吐き出せば、その意味を正確に受け取ったのか、苦笑しながらチョコの箱を見つめている。
そんな彼を横目に私は5つある中の2つぐらいを貰おうと厳選するように眺めていた。