折原家2
□芸術の秋
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「おりはら君がやった方がぜったいいいよぉ!」
「おりはら君の方がかっこいいもんっ」
「紫苑君にしてよぉお!」
「紫苑はへいし1やりたい、って言ってるんだからやらせてやればいいだろっ」
「女子はすーぐ、紫苑にやらせたがるんだからなー」
「はいはーい、静かにっ!折原君がロミオ役をやりたくない、って言ってるのにやらせたら可哀想でしょ?無理に役を押し付けるのは良くないかなぁ、って先生思うんだけど、みんなはどう思う?」
「ダメだと思うっ」
「おりはら君にへいし1をやらせてあげてよっ」
「サトル君がロミオでもいいと思うっ」
男の子と女の子が言い争っていると先生が手を叩いて静かにさせ、意見を求めればコロッと意見を変え、僕が兵士1をやってもいいという子達が出てきた。
何だかそんな事を言われると兵士1よりも、ロミオをやりたくなってくるし、僕はサトル君に譲るつもりで言ったつもりだったので何だか変な気持ちだ。
「じゃあ、ジュリエットやらなーいっ」
「あたしもやらないっ」
そしてやっと決まったかと思えば、重要な役であるジュリエットを誰がやるか、という事になったのだが、
サトル君がやるならジュリエットはやらない、という女の子達が出てきて先生も困った顔をしている。
―――サトル君、何だかかわいそう……。
「ジュリエットやってあげてよっ」
「だってぇ……」
「おりはら君じゃないし……」
「おりはら君ならやりたいのになぁ……」
「ダーメっ、ジュリエットだいじなやくなんでしょー?女の子がやらなきゃ、ジュリエットいなくなっちゃうっ」
「じゃあ、紫苑君がジュリエットやってよ!」
「!?な、何でぼく……?ぼく、男の子だよ?」
「だっておりはら君がロミオじゃないならあたし、やりたくないもんっ」
「あたしもー」
女の子って言うのはとっても不思議だ。
僕は男の子で、女の子にはなれないのに女の子の役をやれって言う。その方がもしかしたら解決するのかもしれないけど、僕が納得いかない。
―――ぼく、男の子なんだけどなぁ……。
「ぜったい、おりはら君のジュリエットにあうよっ」
「かわいいよっ」
「だからおりはら君、ジュリエットやってー?」
「紫苑は男だぞっ、お前たちがやればいいだろー!」
「そうだそうだっ」
いつの間にか僕がジュリエットをやる、という気持ちに女の子達は変わったらしく、僕のジュリエットを見たい、と言い出したが、
友達は僕の気持ちをそのまま口にしてくれて、男の子達は女の子がジュリエットをやればいい、女の子達は僕がジュリエットをやればいい、という意見に分かれた。
―――どうしたらいいのかなぁ……。
ジュリエットなんてやりたくない。
女の子みたいなヒラヒラとしたスカートなんて履けないし、僕は男の子だ。だから先生にジュリエットはやりたくない、って言ったのに―――
「……折原君、先生が綺麗にしてあげるから……ちょっとだけ職員室に来てくれる……?」
なんて言い出し、女の子も男の子もビックリしていた。先生なら[折原君の気持ちも考えてあげて]と言うと思ったのだが、先生は狩沢さんみたいに男の子が好きなのかもしれない。
「それじゃあ、残りのロミオとジュリエットの役、明日全部決めちゃうからねー!」
――――――……
数時間後 新宿 某マンション
愛子視点
「ぼくねー、ジュリエットのやくやってって言われたんだよー?ぼく、男の子なのに……何でかなぁ」
『!?何でそんな事になったの……?』
「あたしもねー、うらしまたろうやる事になったの!」
『何でっ!?』
そろそろ秋本番の時期。
実りの秋やら食欲の秋なんて言われているこの時期に二人の小学校では学芸会があるらしく、色々な昔話を演じるというものであった。