折原家2

□芸術の秋
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注意書き

ちょっとだけ時系列が戻ります。


<芸術の秋>


某小学校

紫苑視点


「今日は今度の学芸会の役を決めたいと思います!」

「がくげいかい、何やるのー!?」

「あたし、かめさんのやくやりたいっ」

「ぼくは、たびびと1がいいなぁー」

「わたしはおとひめさまやりたいっ」

「はーい、静かにっ!2年生の出し物は……[ロミオとジュリエット]ですっ!」

「「?」」

「どんなおはなしー?」

「ええと――――」


先生が解らない子の為に教えてくれたお話。

敵同士なのにロミオとジュリエットって言う二人は好き同士になったけど、お互いの両親は認めてくれなくて、結局二人共死んじゃう、っていうお話。

とっても悲しいお話だって先生は言ってたけど、本当はどうだったのかな。二人とも死んじゃったけど、天国で一緒になれたかもしれない。


僕にはそういうのはまだ難しくて、どうしてそこまでして相手にこだわったのか、なんて解らなくて―――それでも僕のとーととママを見ていると、何となく解る気がする。

とーともママも仲良しで、とーともママがいないと寂しそうだし、ママもとーとが仕事で遅いと凄く心配そうにしてる。

きっとロミオとジュリエットもとーととママみたいに仲良しで、ずっと一緒にいたかったのかもしれない。

ロミオはジュリエットじゃなきゃダメで、ジュリエットはロミオじゃないとダメだったんだ、なんて思った。


「じゃあ……ロミオ役は誰がいいかなぁー」

「おりはら君っ!」

「おりはら君がいちばんだと思いますっ!」

「おりはら君がいいっ」

「紫苑君っ」

「あら……じゃあ折原君、ロミオ役やってくれるかな?」

「ぼくがやるの?……できるかなぁ……」


先生のお話を聞きながら考え事をしていると、誰がどの役をやるのか、というのを決めているようで、大体の子は役割が決まり、後はロミオ役とジュリエット役だけになっていた。

僕は兵士1で良かったのだが、決まってないのは男の子は僕ともう一人の男の子だけで、兵士1とロミオ役が残っている状態だった。

だけど女の子達は僕にロミオ役をやってほしいらしく、手を上げて立候補するのでちょっとだけ困ってしまった。


僕ばかりじゃなく、他の男の子だってロミオ役をやりたい子だっていると思う。残っている男の子を見れば、

ロミオ役をやりたそうな顔をしており、自分が決めるのはちょっとだけ可哀想に思える。


―――ぼくは、ロミオにはなれないよ……?


「できるよぉ、おりはら君なら!」

「ぜったいカッコいいもんっ」

「おりはら君がロミオやるならあたし、ジュリエットやりたいっ」

「ジュリエットはわたしー!」

「はいはい、喧嘩しないのっ、折原君と菊川君、こっち来てくれるかな?」

「はーい」

「……はい」


女の子達は迷っている僕の背中を押すようにそう言ってこちらを向いており、男の子達は反対にもう一人の男の子の方を向いている。

女の子達は勝手だな―――なんて思いつつ、先生が呼んでいるのでそちらに向かえば、

皆の顔が僕達の方を向いており、先生って言うのはこういうものなんだ、なんてちょっとだけビックリした。


「じゃあまずは……折原君。どっちの役をやりたいかな」

「うーん……へいし1がやりたいっ」

「じゃあ次は菊川君、どっちの役がやりたい?」

「……ロミオ、です」

「二人ともやりたいのが決まってるみたいだし、先生は二人の意志を尊重して折原君には兵士1を、菊川君にはロミオをやってもらいたいな、って思うんだけど……どうかな」

「「「えええええええっ」」」


大きな声を出したのは女の子達ばっかりで、後は僕の友達とか、そういう子達が先生の言葉に反対している。
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