折原家2

□のんびりとした休み
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それでも押し通したのは殆ど私の我儘だ。

高校生の時は色々な事件に巻き込まれ、心を弾ませたり萎ませたり、忙しないぐらいに動かしたものだが、今は彼が池袋や新宿といった街で大きな騒動を起こしていない、


と言ったらおかしいが、暗躍し、ただの芽でしかなかったものに水を与え、大きくしているわけではないので平和、

というのも何だが、どこにでもありそうな―――それでも、都市伝説が間近で見られる、そんな街へと変化していた。

そんな中でも情報屋である臨也に仕事が回ってくるそうで、子供達が学校に行った後も、帰って来た後もパソコンの前に座って作業している事もある。

まあそれでも、私との時間や子供達と遊ぶ時間も入れての遅い時間なので昔よりはのんびりする時間が増えたのかもしれないが。


―――この機会に……いっぱいいっぱい折原臨也、っていう人間を知ろう。

―――……私はきっともっとたくさん彼を、知る必要があると思うから。


―――――――……

1月1日 早朝

臨也視点


「んっ……もう朝か……」


目を開けると外からの僅かな光が漏れている事に気付き、億劫とした動きで携帯を見ればまだ起きるのには早い時間であり、

もう一度寝るのも起きられそうにないし、それでも外は寒いので結局布団の中で二度寝するのがオチだろう。

隣では[絶対起きない]という意思が寝相にも表れているのか、こんもりとした布団の山ができており、この中で愛子が眠っているのだと思うと少しだけ面白い。


昨日はこちらがそろそろ寝ようとしていた時に子供がまだ眠たくないとばかりに悪戯をするので目を開けて話を聞けば、

休みがある人間ならばあまり考えないであろう[時間の使い方]について考えていたらしく、彼女がそれだけ家事や育児に追われていたのだと知った。

もし自分ならば趣味である人間観察に励むだろうし、彼女達を半分強制的にどこかに連れていくかもしれないが、

そういった事も俺がずっと押さえていたのでどこかに出掛けよう、という考えすら浮かばないようだ。まあ彼女があまりお金を使いたがらない、というのが原因の一つかもしれないが。


―――お金に困るような生活はしてないんだけどなぁ。


それなりには稼いでいるつもりだ。

彼女達3人が食べる事に困らない程度には貯金はあるし、何かとプレゼントをするくらいには余裕はある。なのでどこかでパフェでも食べてくる、

と言ってもいつものように財布にお金を入れて見送る事もできるのだが、彼女はそれをせずに俺の仕事を見学したい、と言った。

もっと他に時間の使い方があるだろうと言いたくなるが、彼女がそれを望むのならば俺の意見なんて不要だし、

[俺からのご褒美だ]と言ったのも、[羽を伸ばすといいよ]と言ったのも自分なので彼女の時間の使い方について文句を言える立場ではない。


―――そんなに面白いものだとは思わないけどねぇ。


彼女が見ている俺がそのままの仕事をしている俺の姿だ。

別段何か特別な事をしているわけでもないし、警察にバレてマズイものもない。もし、本当にバレてマズイ事があったとしても俺と相手は関係無い―――そういう風になっている。

どちらかが崩れるか、均等に保っていられるか、それだけなのだ。そういった世界に彼女を連れ込む事はしたくないのだが、こうなってしまった以上は仕方ない事だろう。


「ママー、パパ―っ、あさー!」

「今日、ゆきふるかなぁ!お外、すっごくくもってるよ!」


ダラダラとそんな事を考えているといつの間にか起きる時間となったらしく、双子が外で声を荒げているのでゆっくりと上半身を起こし、筋肉をほぐすかのように身体を伸ばした。
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