折原家2
□のんびりとした休み
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<のんびりとした休み>
新宿 12月31日 某マンション
愛子視点
「それじゃあ、言った通り君は好きな時間に起きてきていいから」
『う、うん、分かったけど……本当にいいの?』
年が明けた1月1日。
流石に長くは起きていられなかった双子は既に年を超える前に夢の中であり、
夫婦で過ごしながらテレビから聞こえてくる除夜の鐘を聞きつつ、笑いながら[あけましておめでとう]と言い合った。
何だか変わらない大晦日だったな、と思いつついつか子供達が大きくなって遅い時間まで起きられるようになったら騒がしくとも幸せな大晦日になるのだろうか。
―――3人でジャンプしながら年を超える未来が見える気がする……。
「言っただろう?俺からのご褒美だって。子供達には俺から言っておくから君は何の心配もせずにゆっくり休めばいい」
『……うん、分かった。ありがとう、臨也』
クリスマスの日。
彼は何を思ったのか、私の殆ど冗談のような言葉を真に受け、元旦の日だけ休みをくれる、と言ったのだ。
家事に対して苦に思った事も、面倒だと思った事もなかったのだが、冬は朝が寒いし、水は冷たい。いくら温めた水が出てきたとしても暖かくなるまでに時間がかかる。
それにこれまでずっと目覚ましをかけて眠る事が当たり前で、子供達に[あさだよ!]と起こされ、一緒になって下におりて行き、朝ご飯を作る事も当然のようになっていた。
主婦に休みなし、とはこの事だと実感したが、それでも彼とののんびりとした時間も取れるし、
私が眠そうにしていたら[ゆっくりしてていいよ]と言って子供達や臨也が手伝ってくれるので休みが無くても頑張れたのだが―――
こうやってまさか休みが貰えるとは思っていなかったので、どうやって時間を使えばいいのか解らない。
―――羽を伸ばせ、って言われてもなぁ……。
おやすみの挨拶をしてそのまま布団の中に潜り込んだが、明日のというか今日の時間の使い方について悩んでしまう。
彼に言われたので勿論いつもの目覚ましは入れていないし、
たくさん寝ようと思っているので頭を半分以上隠して音が聞こえないように布団を被っているのだが、考え事をしてしまうと段々眠れなくなってきて、思わず携帯電話を開いてしまった。
―――ブルーライトっていうのが目に悪いんだったっけ……。
時計を見ただけでもぼんやりと部屋の中を照らし、ちょっとだけ携帯を手に持って動かせば隣で眠る臨也の顔が照らされ、思わず笑ってしまった。
どれだけ美人な人でも、どれだけイケメンな人でも、暗闇の中で光を下の方から照らすと不気味に見え、色々な角度から映し出される臨也の顔を見つめていると―――
「……眩しいんだけど」
目を僅かに細め、起きたのかそれとも寝る前だったのか少しだけ不機嫌な彼の声が聞こえ、小さく謝ると[眠れないの?]と問いかけてきた。
『明日、何をすればいいのかなって思って考えてたら目が冴えちゃって……』
「君の好きな事をすればいいさ。……最も、君が望むなら起きた後から家事をしてもいいし、それは愛子に任せるよ」
『……じゃあ。ねえ、1日だけでいいから臨也の仕事、見学させてくれない?』
「……俺の仕事を?」
『うん、きちんと見た事なかったし、見ても何やってるのかよく解らなかったし……』
「……別に大した事はしてないよ?最近は裏社会ならあるような事ばかりだし、他は浮気調査とか、顧客に会って情報交換するぐらいさ」
『そういうのが見たいのっ、ね?ダメ?』
「……今日は人に会う約束はないから、情報集めだけだよ?見ててもつまらないと思うけど、それでいいって言うなら、君の言葉を尊重しようじゃないか」
『っ、ありがとうっ!』
彼が嫌がっているのがすぐに解った。