折原家2
□MerryChristmas!
2ページ/13ページ
物欲が無いと言われるかもしれないが、大体のものは臨也がくれる。
必要ないと言っても、使わないと言っても彼は[きっと君に似合うと思うから]と言って色々なものを色々なイベントでプレゼントしてくれる。
なのでそこまで欲しいと思うようなものはない―――と考えた所で、ふと台所を見てミキサーがないな、と思った。
あまり料理をしないのか、それとも使っても綺麗に洗っているのか新品のようにピカピカに磨かれ、いつ使うの、と思うような調理器具さえ揃っており、驚かせてくれた私の台所。
子供達が生まれ、量も増えた事によってピカピカだった調理器具も年期が入り、壊れる前に買い替え、新しさに感動を覚えている。
焦げ付きが気になっていたフライパンも、長年使う事によって汚れが蓄積された鍋も、熱によって曲がってしまった菜箸(サイバシ)も、
ちょっと最新式のものを取り入れたら困っていた事が全て解決され、またこれでたくさんの料理が作れるとニマリとしてしまったぐらいだ。
前にテレビでフルーツジュースをミキサーで作っているのを見て子供達が[あれ、おいしそうっ][のんでみたいっ]と言っていたのを思い出し、
台所を探ってみたのだが、見当たらず、いつか欲しいな、と思っていたものだ。
―――それに野菜から絞ったジュースって体にいいらしいからね。
子供達や臨也の健康を守るのが私の役目だと思っているので、身体に良いとか言われるとやってみたくなるのは仕方ないかもしれない。
そんな事を考え、数分考えた後[ミキサーが欲しいです]と書いて、手ごろな自分の靴下に入れているとそれに気付いた臨也が
[子供達みたいに隠してくれてもいいよ?]なんて笑うので、そのまま寝室へと行き、彼の枕の下に入れて戻ると[きちんと隠せたかな?]
なんて子供みたいな事を言うので口を尖らせつつ、隠した事を伝えた。
「それじゃあ早めに子供達と君のクリスマスプレゼントを確認しておこうかな」
『早すぎないっ!?まだ12月8日だけどっ!?』
「ほら、こういうのって善は急げ、って言うだろう?それに今日買う訳じゃないんだ。確認しておくだけだよ」
『……まあ、それならいい、のかな……』
どうして皆そんなに気が早いのだろうか、なんて思いつつ、ニコニコと寝室と子供達の部屋へと向かっていく臨也の姿を見た後、
今年のケーキについて子供達に問いかければ、[何がいいかなぁ]と迷っている様だ。
「フルーツケーキは前食べたでしょー」
「イチゴケーキも前食べたっ」
『……よく覚えてるね……』
いつどんなケーキを食べたのかなんて全く覚えていないのだが、二人は[ケーキ、おいしかったもんっ]と笑うので甘党な双子だからこそなのかもしれないとちょっとだけ思った。
「ケーキ、いっぱい食べたねー。何がいいのかなぁー」
「あっ、ねえねえ!おしゃしんのケーキっ、おしゃしんのケーキが食べたいっ」
『……お写真の、ケーキ……?』
「うんっ、学校でね、おしゃしんのケーキ食べたって子がいたんだよ!」
「おしゃしんのケーキかぁ……おいしいのかなぁ」
突然娘がそんな事を言い出し、一瞬呂律が回っていないだけなのかと思ったが、写真のケーキと考えると納得できた。
小学校になると本当にこういった[私が知らない事]を知っているような顔で話し始めるので驚いてしまう。
臨也が聞いたら[ああ、それか]と言うかもしれないが、ここにはいないのでどういうものなのか想像できない。