折原家2
□MerryChristmas!
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<MerryChristmas!>
12月上旬 新宿某マンション
愛子視点
「ジングルベール、ジングルベール♪」
「真っ赤なおっはなのー♪」
『……よく混ざらないね』
12月に入ると寒い日が多くなり、この事務所兼リビングにも暖房が入る日が多く、子供達も朝から[さむいさむいっ][早くだんぼう入れてっ]と言うようになった。
そんな中、もうすぐ来る1年の中で盛り上がるイベントであるクリスマスが待っているとなると子供達のテンションも高くなり、
スーパーやデパートなどクリスマスのコーナーがあったりすると[見てもいいっ!?]と言ってから返答を聞くまでの間がとても短く、
言う前に離れてしまう事もあり、迷子にならないか心配になる事が多くなった。
―――嬉しいのは解るんだけどね……。
スーパーの広告を見ても、おもちゃ屋の広告を見てもどれもがクリスマスの事ばかりで時々お正月の商品も入れる所もあったが、大体はオードブルやクリスマスケーキの予約などが多い。
予約かぁ、と考えるがテレビでは人気のクリスマスケーキは既に完売している、という話を聞いてまだ12月の初めなんだけど、と苦笑しながら見つめていたのを覚えている。
―――今回はケーキ屋さんでケーキの予約とかちょっと楽しいかも。
いつもスーパーのケーキを買って、子供達と一緒に持って帰るのだが、
今年はきちんとケーキ屋さんでケーキを予約してクリスマスになったらケーキを持って帰る、というのも楽しいかもしれない。
「もうサンタさんに頼むプレゼントは決まったの?」
「うんっ」
「ちゃーんとおてがみかいて、くつしたに入れたよ!」
「そう、それならきっとサンタさんが見つけてくれるね」
「「うんっ」」
別々の歌を歌いながら上機嫌な二人に旦那はクリスマスの中で一番のイベントである双子のクリスマスプレゼントについて問いかければ、
まだ12月に入ってからそんなに日にちも経っていないのに既に欲しいものが決まっているらしい。
どうしてこうもクリスマスを楽しみにしている人達、というのは気が早いのだろうか。
私だってそれなりには楽しみにはしているが、そこまで慌てて準備をしたり、予約をしたりはしないつもりだ。
―――……そんな事を考えてるからいつも慌てて準備してるんだけどね……。
「ねえ、君はもう決まったの?」
『……へ?』
「へ?じゃないだろう?サンタさんに頼む、クリスマスプレゼントだよ」
『え、いや……私は……』
色々と考えていると次は私の番だ、とばかりに旦那が問いかけてくるので思わず間抜けな声を出せば、当然とばかりにそう言ってこちらに迫ってくる。
今まで私と旦那―――折原臨也がサンタさんとなって子供達のプレゼントについて選んでいたのだが、今年は臨也が私のサンタさんになってくれるらしい。
そんな事をしなくてもいつも通り、[君へのクリスマスプレゼントだよ]と言って渡してくれた方が嬉しいのだが、何故だか今年はそれが嫌らしい。
「そんなに遠慮しなくてもいいだろう?これに書いて靴下に入れてくれるかい?」
『……はーい』
渡されたのはいらなくなった紙のようなメモ用紙であり、受け取るのに少し躊躇ったが、臨也の顔がほんの少しだけ楽しそうにしていたので、
目的は私のクリスマスプレゼント、というよりも私が悩んでいる顔のようだ。どんなものがいいだろうか、値段が高いものは―――
なんてモダモダと考えている私の顔を臨也は見たいらしい。
そんなものはいつだって見ている筈なのに、と思いつつソファに座り、ボールペンを借りて考えてみるがやっぱり見つからない。