折原家2

□初心忘れるべからず
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「そんな言葉が貴方の口から聞けるとは思ってなかったわ。どうするもこうするもまだ浮気だって決まったわけじゃないんでしょう?

それならさり気なく聞けばいいじゃないの。貴方や子供達の為に買おうと思っただけかもしれないわよ?」

「……それならその男は?」

「たまたま会った知り合いじゃない?彼女、色々な人間と交流を持ってるようだし、よく誘われるらしいじゃない。それならたまたま会って話をしていただけかもしれないわ」

「彼女の交友関係は大体掴んでるつもりだけど、こんな男なんて見た事ないよ?……狩沢方面の知り合い、って線で考えると君の言ってる事は正しいかもしれないね」

「それなら答えは決まってるじゃない。早く聞いて仕事に集中してほしいものだわ」


―――――――……

数時間後

波江視点


『ただいまー』

「おかえり、愛子。……ねえそのケーキどうしたの?」

『ああ、これ?臨也達と食べようと思って買ってきたんだよ。臨也はどれがいい?』


そろそろ私の仕事も終わろうかと言う時間帯。

子供達も学校が終わり、足早に帰ってくると[こうえんであそんでくるね!]と一言言うとまた嵐のように去っていき、ここには大人が3人だけとなった。

疲れたように帰ってきた彼女と帰りを待ち望んでいた臨也は相手に気付かれないように、それでも慌てているのが解るような動きで

愛子を出迎えれば、手に持つ小さな四角い箱に目を向け、問いかければ気付いたかのようにテーブルの上に置き、中身を見せている。


―――今のところはいつも通りね。


何か隠しているわけでも、言いにくい内容があるような感じはなく、[遅くなってしまったからお詫びに買ってきた]という理由がつくような雰囲気だ。

それには臨也も疑ってはいないようで[それじゃあショートケーキにしようかな]と言いつつ、準備した皿に乗せるとそのままフォークで口へと運んでいく。


『あ、波江さんもありますけど、食べます?』

「そうね、頂くわ」

『後は……モンブランと苺のタルトとショートケーキなんですけど、どれがいいですか?』

「……モンブランにしようかしら」


そんな男を眺めていると気付いたかのように彼女がそう言うので耳で聞きながら箱の中を見れば、色とりどりなケーキが丁寧に並べてあり、どれも美味しそうに見えてくる。

臨也がショートケーキを選ばなければ自分がそれを選んでいたのだが、一緒と言うのが気に入らないので二番目に気になる物を選び、自分の皿に乗せ、フォークで口へと運んでいく。


「貴女は食べないの?」

『私、お腹いっぱいで……今日は狩沢さんとスイーツ巡り、っていうのに付き合わされて……食べ過ぎちゃったんで止めました』

「そう。ねえ、貴女って臨也以外に好きな人はいないの?」

『っ!?な、何を急に……!そ、そんな事、恥ずかしくて言えませんよっ!?』

「いいじゃない。挨拶のように[愛してる]なんて言ってるんだから、今更でしょう?」

『……っ、そうですよっ、わっ、私は……臨也の事、愛してますし、大好きですよっ、悪いですかっ!?』


さり気ない話から彼女の心を引き出そうと口を開けば、一瞬で顔を真っ赤にさせ、臨也の方を見ながら口をパクパクさせていて―――貴方達はいつまで新婚気分なの、

と言いたくなったが、それも今更なので別の事をサラリと口にすれば、開き直るように[大好き][愛してる]という愛子。

それには流石の臨也も耐えられなかったらしく、フォークを自分の指に刺すなどらしくない動きをする為、先程の事を思い出し、溜息を吐き出す。
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