折原家2
□がんばるもんっ
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子供達+波江さんで両親の看病をしたら可愛いかも、なんて思った話。
<がんばるもんっ>
新宿 某マンション 早朝
愛子視点
―――……分かってた事なんだけどなぁ……。
頭が重い。
朝起きて一番最初にそんな事を思った。
これが寝不足からではない事ぐらい解っているつもりだが、[そうだったら良かったのに]と思わずにはいられなかった。
だが、頭痛やら気持ち悪さやら、背筋から来る寒さがそうではないと告げており、大きく溜息を吐き出した。
「……愛子……?」
『あ、ごめんね、起こしちゃった?』
「いいよ。俺も丁度、起きた所だから」
誰にぶつければいいのか解らないこの不快感を、ベッドにぶつけるように思い切り寝転んで今後について考えていると隣で寝ていた旦那が目を開け、小さな声で私を呼んだ。
数日前にどこの誰に貰ってきたのか、不調を訴え、寝ていればすぐ治っていたであろう風邪を[やる事があるから]と言って冷えピタを貼り、
マスクをしながら一昨日の朝まで仕事をしていたのだが、ついに限界が来たのか夕方ぐらいから起きられない程に悪化してしまい、今もあまり調子が良くないらしい。
そんな中で看病したり、彼の我儘に付き合ったり、いつものように一緒に寝たりしていれば移るわけで―――まさか夫婦揃って風邪を引くなんて誰が思うだろうか。
―――臨也には何も言わずに家事とか……。
―――無理っ、私が死ぬ……。
一瞬、誰にも言わずに市販の薬だけで風邪を治そうかとも思ったが、そんな事ができる程器用ではないし、辛いのは嫌なのでその考えはすぐさま消え去り、一人でうんうんと唸っていると―――
「……俺が言うのもあれだけど、顔色悪いよ?風邪、移った……?」
顔を半分隠しながら力なく問いかけてくる旦那に自分の考えは甘い事を知り、素直に頷くとゆっくりと近付いてきて額と額をくっつけ、熱を測っているらしい。
『……臨也。それ、あんまり意味ないと思う……』
「やらないよりは、マシだと思わない?」
『思わない。臨也の方が熱いもん』
「……。そのうち俺より上がってくるよ。子供達と波江さんには、俺から伝えておくよ。波江さんも、君が寝込んだってなれば、手伝ってくれると思うしさ」
『……そんなフラフラでよく動こうと思うよね、そういう所尊敬する』
彼の暖かい額が私の額に当たり、まだ熱がある事を知らせ、心配になるが今は旦那の事よりも、
家事やら子供達の朝ごはんやら色々な自分の仕事であり、このまま知らん顔をして寝てしまう訳にはいかない。
無理をしてでも立ち上がろうとするが相手―――折原臨也は私の手を引っ張り、
そう言いながら私を制止し、起こしてくれそうにないのに自分はフラフラと布団を捲って起き上がると厚手の上着を羽織って扉を開けようとしていた。
―――……責任とか感じてるのかな、やっぱり。
―――別に臨也のせいじゃないのに。
「大人しく寝てるんだよ?起きたりしたら、何か一つ、罰ゲームをしてもらうからね」
『……はいはい、ちゃんと寝てるから臨也も早く戻って休みなさい』
「分かってるよ。俺だって馬鹿じゃないんだ、少し話してすぐ戻ってくるよ」
―――――――……
臨也視点
「あれー?パパだ―」
「ママは―?」
「ママは風邪だってさ。熱があるみたいだから静かにしてるんだよ?」
「「はーいっ」」
風邪を引いた父親がいるのは解っているので二人はいつものように起こすような事はせず、
事務所となっている1階でテレビを見ながら母親が来るのを待っていたようだが、寝ている筈の父親が下りてきたので驚きつつも、本来下りてくるはずの母親の姿を探している様だ。