折原家2
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新宿 某マンション
愛子視点
―――もう11月かぁ……。
―――1年なんて本当にあっという間だねー。
携帯のカレンダー機能を見ながら心の中でそんな事を呟く。
同じ事を何度も言っているかもしれないが、気付いたら既に1年も終わりを迎えようとしていた。
考えれば色々あったような気もするし、いつもの[日常]を日常として過ごしていた気もする。旦那と話をして、時に笑って時に怒って、時に呆れて―――彼の偽物が現れた事だってあった。
―――今年のクリスマスはどうしようかな。
そんな昔の思い出を思い返しつつ、後1カ月となったクリスマスについても考えなければならず、今年はどうやって家族で過ごそうかと思うだけで忙しく感じてしまう。
いつものようにお祝いするのもいいし、時にはちょっと違ったお祝いをするのもいいかもしれない。
旦那が許可をくれるなら、家族で少しお高い料理を食べに行く、と言うのもアリだ。
「ねえ、今何を考えてたの?」
『何って……色々だよ』
「君って何か隠そうとする時って、大体色々で済ませようとするよねぇ。何が色々なの?」
テレビを見たり、携帯を見たり、洗濯物を取り込む時間までの自由時間をのんびりと過ごしていると何を思ったのか、
いつもの席で調べ物をしていたらしい旦那がこちらに目線を向けながら問い掛けてきた。
隠す事でもないので素直に答えたのだが、いつも私が[色々]という言葉を使うので何か隠し事があると思ったらしい。
[色々]で会話を終わらせようとしない相手はこちらの態度に興味を持ったのか、立ち上がってこちらへとやってくると[何を隠してるの?]としつこく聞いてくる。
―――……今度から[色々]って言うの止めよ……。
別に対応をするのが面倒、とか相手が嫌いというわけではないのだが、
調べ物を中断してまで聞いてくる内容ではないので心の中で溜息を吐き出しつつも、先程まで考えていた事を全て晒せば、[何だ、そんな事か]と一瞬で興味が失せたらしい。
『臨也は何だと思ったの……?』
「携帯をジッと見つめながら何か言いたげな顔をしてたから、今日が何の日か覚えててその事について考えてるのかと思ったよ」
『?……今日?……11月、22日……。……ああ、いい夫婦の日か。そんな事すっかり忘れてた』
そんな一瞬の変化に呆れつつも、どういう事なのかと聞けば、ニコニコしながらそういう為、
携帯と睨めっこしながら今日が何の日か考えて―――確かそんな日もあったな、とおぼろげに思い出す。
いい夫婦の日だからと言って別に何かするつもりもないのだが、相手―――折原臨也は何かを望んでいるかのように隣に腰掛けながら私の言葉を待っている様だ。
―――別に何かするお祭りでもないのに……。
[11月22日]が[いい夫婦]となるだけで、[クリスマス]とか[バレンタインデー]とかそう言った人間達が浮かれてしまうような、
そんな記念日ではないのだから、と思ってしまうが、臨也は私と何かしたいらしい。
何か、と言われたら困るし、言われるまで気付かなかったのだが、今から考えるとなると結構難しい気がする。
―――キス、とか?それはいつもやってるし……何か珍しい事……。
―――……あーん、とか?
風邪を引いた時や怪我をした時ぐらいしかやらないのでそういった事をやりたいのかと素直に問いかけると[それも興味があるね]とちょっとだけ彼の好奇心が刺激されたらしい。
「君があまりやらないような事を今日はやりたいな、って思うんだけどどうかな」
『やらないような事……?あんまり思いつかないんだけど』
[どうかな]と言う癖に私には拒否権が無いのが彼の言葉だ。