折原家2

□おでん
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「そうかな。たまには違うものが食べたくなるものじゃない?まあ、できればでいいから考えておいてよ」

『うん、分かった。いってらっしゃい』

「行ってきます」


―――――――……

数分後

愛子視点


―――おでんかぁ……何を入れたらいいんだろう……。


定番、といったら定番なのだが、それでも色々な種類が多すぎて何を入れたらいいのか迷ってしまう。

はんぺい、と言っても何も入っていない一般的なはんぺいから、ゴボウや人参など色々な野菜が入ったはんぺいなどもあるし、

肉、と言っても骨付きなのか、骨無しなのかによっても変わってくる。そう考えると案外おでんに入れるもの、というのはその人の好みが出るような気がする。


長年臨也と暮らしているので何となく彼の好きな味、というのは解っているつもりだが、好きな具材を考えたら思いつかない。

野菜が嫌いな彼にゴボウや人参などが入ったはんぺいは食べないだろうし、大根なども一応野菜なのでもしかしたら食べない可能性だってある。

そう考えたらおでんよりも、お鍋の方がいいのではないかと思ってしまうのだが、彼が[おでんが食べたい]と言ってくれたからにはできる限り叶えてあげたい。


―――何時に帰ってくるか、解らないし……冷えた体にはいいかもしれないよね。


外はとても寒い。

そんな中でどこに行くのか解らないが、外に出掛けて行き、何時に帰ってくるとも言っていなかったので帰ってくるまでに温めて、置いておいたら喜ぶに違いない。

冷えた身体が喜ぶようなおでんを作ろうと思いつつ、この温かな部屋の中でマフラーを編み続ける。


前に一度お試しで作ったものは一応完成し、彼にプレゼントすれば

[次はもっといいものを期待してるよ]と言っていつもコートなどをかけている所に置いてあり、まるで宝物のように飾ってあるのが、ほんの少し恥ずかしい。


そこまで大したものではないし、何度か編み間違えてしまったものなので返してくれた方がいいのだが、まるで[返さない]とばかりに自分の荷物の中に紛れているので、子供達も私も触れない。

触っても彼は怒らないだろうし、逆に[あれ、触った事なかったっけ?]と言うかもしれないが、

いくら夫婦だからと言っても他人の荷物に勝手に触る、という行為はあまり好ましい行為ではないと思っている。

洗濯物など臨也が私に頼んだ事ならばそれは自分の仕事として理由が付けられるし、彼もそこまで着るものにこだわっていないのか、殆ど洗濯物や着るものは私に任せっきりだ。

だが、彼の携帯やコート、鞄やファイルなど情報屋としての仕事に使うものは話が違ってくると思う。


臨也が緊急事態で、どうしても―――という時は携帯を使う事もあるが、何が入っているかも解らない携帯を無暗に持ち出したり、

借りたりするのは怖いし、鞄やファイルなども何が入っているのかも解らないので彼と出会ってから10年以上、極力触らないようにしてきた。

コートはただ、臨也が一番使うものなので洗ったり、クリーニングに出す時以外は触る事が無い、というだけなのだが。


―――……興味はあるんだけどね。


遠慮しているつもりはないのだが、やはり彼の荷物だから、という気持ちが強く、子供達に[パパの仕事のものは触っちゃダメ]と言っているのに自分が触るのはどうかとも思ってしまう。

理由があって触る事を禁止しているのにそれを自ら破るのは自分自身が許せないし、子供達にも示しがつかなくなってしまう。
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