折原家2

□おでん
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おでんが食べたくなる季節ですね。


<おでん>


11月下旬 新宿 某マンション

愛子視点


『外、本当に寒いよねー。晴れてても寒いし、雨降ってても寒いし……早く春になればいいのに』

「そうだねぇ。寒いのは好きじゃないし、できれば晴れた温かい日に出掛けたいんだけどね」

『そうなんだよねぇ……。でも、臨也はいいじゃん、毎日出掛けるわけじゃないんだから』

「それを言ったら君だってそうじゃない?買い物と竜ヶ峰君達と出掛ける時以外、外には出ないじゃないか」

『そっ、それは……そう、なんだけど……』


外を見ながら適度に保たれた空間で話をしている私達。

外にはマスクをした人間や、マフラーを巻き、コートを羽織った人間、寒そうな格好をしながらも急いでいる学生など様々で、季節の移り変わり、というものを見ているような気がする。


暑い夏の日はタオルやハンカチで汗を拭っていたり、手で団扇を作ってパタパタと扇いでいたりと、夏を感じ、

ちらほらと夏物だったり、薄手の長袖を羽織ってたりするともう秋や春なんだな、と思う事ができた。

そんな中でいつものように家事を終わらせ、仕事の休憩中であろう旦那とほんの僅かな夫婦の時間を楽しんでいる、というわけだ。


―――どっちもどっちだよね、多分……。


あれこれどっちが外に出ていないかと話をしているが、旦那である男―――折原臨也も寒い日と暑い日は本当に必要最低限にしか外に出ないし、

基本の仕事が情報集めの彼はデスクワーク、というのか、そういうのが多いので結果的に外に出る事が少ない。

そして私は用事がなければ出掛けちゃダメ、というのが臨也の口癖のようなものなので買い物以外、外に出るのがとても少ない。

前よりは自由になったが、友人達も結婚し、家族がいてなかなか会う機会も少なくなってしまう。


会ったとしても狩沢さんとか、そういう[話がしたい][遊びたい]と言ってくれるような人ぐらいだ。まあそれでも、連絡は毎日のように取り合っているので、

そこまで距離が離れた、とか友達ではなくなった、とかそういうのはないのでそう言う点では私は恵まれているのかもしれない。


―――1人で出掛けるのもなんかなぁ、って感じだし……結局家にいる事が多くなっちゃうんだよね。


別にお金を使っちゃいけないとか、こうしなければいけない、とかそういうのはないので無理にでも用事を作って外に出る事も可能だが、

そこまでして臨也と離れたいわけでもないし、多分、外に出たとしてもスーパーに行って帰ってくるぐらいで帰ってきてしまうだろう。それぐらい、ここは居心地がいいのだ。


「……まあ君がここにいたい、って言うのなら俺はそれを尊重するよ?別に邪魔になってるわけでもないし、君とこうやって喋っているのも好きだからね」

『何か……改めてそう言われると恥ずかしいって言うか……。……やっぱり恥ずかしい』

「そんなに毎回のように恥ずかしがられると俺が無自覚で君を惚れさせようとしてるみたいだよね」

『……女の子の扱いとか上手いもんね、臨也』

「それとこれとは話は別だと思うんだけど。……まあいいや、何か温かいものでも作ってよ」


嬉しい事を言われ、口元がニヤニヤしているのが自分でも分かり、誤魔化すように口を尖らせれば、

臨也はニコニコしながらそう言い、立ち上がると厚めのいつものコートを羽織って、どこかへ出かけるつもりのようだ。


『温かいもの……お鍋とか?臨也、お鍋好きだもんね』

「鍋か……確かに鍋も捨てがたいけど、今日はおでんが食べたいかな」

『おでん……何か、臨也とおでんってなかなか珍しい組み合わせだよね』


臨也はよく冬になると、お鍋を食べたい物で注文するが、今回は珍しくおでんが食べたい、というので少し驚きながら言葉を返していく。
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