折原家2
□臨也vs折原
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名前は有名だろうし、天敵である平和島静雄さんと喧嘩している姿を見かけた人間は少なからず池袋に存在しているので
[池袋最強と喧嘩している無謀な奴]ぐらいには認識されているかもしれない。
それに情報屋という仕事をしているので、数は少ないかもしれないが、彼のお客さんとなった人間もいると思う。あまり噂が広まらないのでそういう部分は秘密を厳守しているだろうし、
自分が[こういう情報を情報屋から買った]なんて知られたくもないので隠している、といった方が正しいのかもしれないが。
―――結構知ってる人は多そうなのにね。
確かに裏で動いている事の方が多いので顔を知っている人間、そして名前を知っている人間は少ないかもしれないが、それでも何だかんだで臨也は目立つ。
彼は自分の容姿についてどう思っているかは解らないが、そういう部分では[印象]というものを相手に与えてしまい、顔を覚えられてしまう可能性が高くなるので今までの間、
よく生き延びて来られたな、とちょっとだけ思った。例え彼が人間の波に呑まれてしまっても、モデル並の体型と整った容姿は見つけられる自信がある。
それぐらい彼はいい意味でも、悪い意味でも目立つのだ。
「……何を考えてるのか知らないけど、別に君にこの事件を解決してほしい、って言ってるわけじゃないんだ。
ただ、面白い意見を期待してたんだけど……その様子じゃ、何も浮かばなかったようだねぇ」
『おっ、面白い意見って何っ!?そりゃあ私が解決できるとは思ってないけど……何でかなあって思ったっていいじゃん』
「ああ、言葉が悪かったね。別に君が悪いわけじゃないんだ。意外とさ、こういうのってあまり知らない人間の方がポン、
と解決に繋がるような意見を出す事があるかと思ってね、それに賭けてみたのさ」
『勝手に賭けたり、期待したりしないでっ?!……私、どうして臨也のコスプレをした人がいるのか、っていうより、
何で臨也なの、って疑問の方が大きいって言うか……するならもっと違う人がいたんじゃないのって思った、かな……』
「コスプレ、っていう辺りが君らしいけど一理あるね。目立つ人間なんてどこにだっているし、誰でもいいのならシズちゃんでも、セルティでも良かったわけだ。
……何故[折原臨也]という人間を選んだのか……君も気になるだろう?だからさ、一緒に探偵ごっこしようよ」
『……またやるの?』
「今度は探偵と犯人じゃないよ。俺達は一緒に犯人を見つける仲間だ。ほら、よくあるだろう?敵対していた相手と一緒になって戦う、っていうあれだよ」
『……何だかんだ言いながら、臨也もドラマとかアニメ見てるよね』
「君の影響さ。俺だけだったら深くは知ろうともしなかったよ」
少し前に探偵となって調べたり、犯人役である臨也に私の考えをぶつけたりした事があるのだが、彼はまたそれをやりたいらしく、顔が少しだけ嬉しそうだ。
彼の知識は片寄ってたりもするが、基本は広く浅く、なので単語は知っていても詳しくは知らなかったり、興味がないものはすぐに忘れてしまう。
あれの何が面白かったのか私には解らないが、拒否権はないらしく、[パソコンも調べられるように用意しておいたからさ]
と嬉しそうに私が使っているノートパソコンを腕で引っ張ってこちらに持って来て片手で操作している様だ。
『……本当好きだよね、一緒に何かやるの』
「言っただろう?夫婦でこの面白さを分かち合いたい、ってさ。ただそれだけだよ」
『……本当、恥ずかしい……』
サラッと吐き出す言葉に私は耳まで真っ赤になっていくのが解り、
隠すように髪の毛を触っていたが不自然な動きをしていたのか、[そんな事じゃ隠せないよ?]とクスクス笑いながらそう言う臨也。