折原家2

□臨也vs折原
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そして定位置、とばかりに私を引き寄せ、自分の膝の上に座らせるとそのまま抱き着くかのように、

腕が腰の横からきてそのままパソコンを操作するかのようにマウスを動かし、私に何かを見せたいらしい。


『?何これ』

「俺の目撃情報らしいよ?」

『……は?』


画面にはどこかのサイトの一部らしいが、彼は何も言わずに私の感想を待っている様だが、

書いてある内容は[新宿で見た]とか[横浜でスキップしてた]とか何かを探しているかのような内容であり、意味が良く解らない。


思った事をそのまま口にすると彼はクツクツと我慢するかのように小さく笑い、

私の疑問に答えるが、訳が分からなくて更に疑問が大きくなり、思わず彼―――折原臨也の方に首を動かすと均等に整った顎が見えて、一瞬だけドキ、とする。

そんな私とは反対に彼は画面を見つめたまま[そのままの意味さ]と言いながらマウスを操作し、過去の内容に遡っている様だ。


「これが出回ったのが、つい最近でね、あちこちで俺を見た、っていう情報が出てるんだ。

でも俺はいつも通りの事しかしていないし、旅行に出かけた、ってわけでもない。……面白いと思わない?」

『……面白くも何ともないんだけど。寧ろ怖っ』

「つれないなぁ。夫婦でこの面白さを分かち合おうと思って君に話したって言うのにさ」

『私は臨也がその話で分かち合えると思った事に関して驚きなんだけど……』


ウキウキしながら話をしている彼は、本当に楽しそうにしていて―――だが、どうしてそんなに嬉しそうに、

楽しそうに話ができるのか理解できないし、[色々な所で自分が目撃されている]なんて知ったら怖くなってしまいそうだ。

まあ、彼の場合知ってる人は顔も知ってるし、服装も色とりどりの中に居ればそれなりに目立つので[似せている]だけだとは思うのだが。


―――顔も似てたりしたら、ちょっと怖いけどね。


私は彼に見せられた内容でしかこの事を知らないので実際に見た、という人がどんな顔でどんな服装をしていたのか解らないが、

時々盗撮のように後ろ姿を撮っている人がいたが、大して似てないようにも思う。その次の写真も横顔なのだが、

これまた[似せただけ]というのが解る写真であり、コスプレしていると言われた方がしっくりくるような気がする。


「冷たいなぁ。でもほら、考えてみなよ。あれから今までの間に俺は街を引っ掻き回すような事をしたかい?前のように話の中心には俺がいる、とばかりに名前が上がるような事もなくなった。

平和、とも言えないけどさ、俺が何か手を出さなくても町は動いている。時に愛が芽生えたり時に憎悪が芽生えたり……

1年前にあった飲食店が消えて、新しく喫茶店に変わってたり、駐車場になってたりしてるよね。そんな中でどうして今更俺の名前がこうやって上がってると思う?

確かに時々は上がってたよ。俺も仕事してるから、あちこち移動するし、時々シズちゃんと喧嘩もする。

だから[またあの二人が喧嘩してる]とか、そういう話題が上がる事はあったけど、俺単体で話題に出る事なんて早々ないんだよ」

『……まあ確かに。臨也ってザ・悪役って感じだもんね。裏でコソコソやってる感じの……』

「……否定はしないよ。そうなるように動いてきたのは紛れもなく俺だからね。

けど、だからこそおかしいと思わない?どうして今、こうやって俺の名前が出てあちこちで見かけた、なんて話が出るのかな」


顔が良いのにあまりあまり表舞台に出ようとはしない臨也。

イケメンにはイケメンにしか解らない苦労があるのだろうかとも考えた事はあるが、その話をされても私は共感できないし、どうしようもできないので聞いた事がないのだが、

確かにそうやって生きてきた彼がネットと言う誰が見ているか解らない所で話題になる、というのはおかしな話だ。
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