折原家2
□新しい事
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<新しい事>
新宿 某マンション
愛子視点
『…………』
「?」
長いようで短い子供達の夏休みが終わってしまった。
二人は[もっとなつやすみ、あったらよかったのにねー]と宿題をしながら呟いていたが、母親の私ですらそう思ってしまう。
まだ子供達が生まれる前―――高校生の時は旦那になった彼氏が夏休みぐらい家に居て欲しいと、
どこかにデートに行く、とか遊びに行く、という事はなく、ただ淡々とした夏休みを過ごしていた。確かに高校1年、2年の時は色々な事件に巻き込まれ、
夏休みというものに自覚がなかったのだが、落ち着いた高校3年、そして結婚して子供が生まれて―――
二人が保育園に入るまでの間、殆ど毎日が夏休み、と言わんばかりの状態だったので季節感もなかったし、そういった感覚も薄れつつあったのだが、
こうやって春休み、夏休み、冬休み―――などなど子供達の行事に合わせていくと自分が高校生だった頃を思い出し、懐かしくなる。
そして今日、子供達は[しゅくだい、ちゃんとやったよ!]と父親に見せ、元気よく学校へと向かって行った。
毎日が嵐のようで―――彼も子供達に構ってもらって嬉しいようだが、ほぼ毎日のように[あそんでー!]と後ろから飛びついたり、
足に纏わりついたり、大変だったらしく、こうやって学校へと向かう子供達に安堵した表情を浮かべているのを見てしまった。
あれだけ子供達に振り回されたのだ、やっと解放される、と思っても仕方ない事かもしれない。
だが、彼―――折原臨也も[仕方ないな]と言いつつも相手をし、子供達と楽しんだのだからいいじゃないか、とこちらからしてみればそう思ってしまうのだが、思い切り体当たりされた時に腰を痛めたのか、
僅かに腰が痛そうにしながらパソコンの前に座っていたので理由はきっとそこにあるのだろう。
無理をして子供達の相手をしていたら悪化してぎっくり腰になりかねない、そう考え、やっとその原因の子供達が学校に行ってくれて良かった―――そう考えているのかもしれない。
―――臨也がぎっくり腰か……考えられないな。
歳を取れば骨が脆くなり、少しぶつけただけでも骨折をする可能性が高くなるらしいのだが、まだまだ見た目が若い臨也が腰を痛そうにしながらさすったり、
そのうち湿布とか貼りだしたら私はどんな目で見ればいいのだろうか。
それに背中ならばシップを貼るにしても見えないので私が貼る事になったりしたら思わず笑ってしまう可能性だってある。
笑ってしまったら可哀想だと分かっていても、やっぱり似合わなくて笑いそうで―――我慢して変な顔をしてそうな気がしてまだ湿布すら用意していないのにそんな事も考えてしまう。
ニヤニヤ、ニコニコ表情が忙しい私に彼は[頭大丈夫?]と言わんばかりの表情でこちらを見ながら[何を考えてたの?]と言うので流石に
[臨也がぎっくり腰になった姿を想像してた]なんて言えないので適当に子供達がいない事について話をすれば、更に彼の疑問は大きくなっていく。
「二人がいなくてそんなに嬉しいの?……君って変な所大胆だよね。いつもは恥ずかしがるくせに」
『!?ちょっ、何か変な勘違いしてない!?』
「勘違いなんてするわけないだろう?君が言ったんじゃないか、[子供達が居なくて寂しくなるね]って。それはイコール、二人っきりになっちゃったね、って事じゃないのかい?」
『そ、それは……そうかもしれないけど……そういう意味で言ったんじゃないですぅっ』
「そうなの?てっきりニヤニヤ、ニコニコしてたから二人っきりになった事を想像して喜んでるのかと思ったよ」
楽しそうに語る彼の言葉にやっぱり私は忙しそうで―――いつまで経ってもこういう所は変わらないんだな、といつも思う。