折原家2
□VS友達
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<VS友達>
新宿 某小学校
視点なし
「ねーねー、今日筑紫ちゃんのお家にあそびに行ってもいい―?」
「いいよー!今日ねーママがホットケーキつくってくれるんだって!いっしょに食べよー」
「うんっ」
どこにでもあるような小学生の会話。
ニコニコしながら返事を返し、学校が終わった時の楽しみについて語る姿はいつの時代も変わらないのかもしれない。
少女はとても活発的で、勉強やスポーツもできて、自信満々に大人顔負けの言葉を吐き出す彼女に、時々悪口を言う子供もいたが、
悪口を言っていても気にしていないかのように分け隔てない少女の姿に悪口を言う自分達の方が悪い気がして0ではないにしろ、減ってきている。
それが―――折原筑紫という子供だった。
―――――――……
同時刻
視点なし
「今日、紫苑の家でゲームしようぜー」
「ぼく、ゲームもってないよー?」
「いいよいいよ、オレがかしてあげる!おもしろいからぜったい、紫苑も気に入るから!」
「わかった!」
同じ時間、同じように少年は友達に誘われ、疑問をそのまま相手にぶつければなんて事のないかのように笑って答え、それならば大丈夫だ、と頷けば、
友達は[筑紫ちゃんもいっしょにかえるんだよな!?]と囁くように問いかけてくるので何故相手は自分の姉の事を聞くのか解らない、と言わんばかりの表情をしつつ、
一緒に帰る事を伝えると大喜びする友達。そんな相手の反応に更に首をかしげるが、友達は全く気にせずに手を振ってどこかへと行ってしまった。
「さっき、ハルキ君と何はなしてたのー?」
「?お家でゲームしよう、ってさそわれたよ。ハナちゃんもいっしょに行く―?」
「えっ、行っていいのっ!?」
「ええええ、ハナちゃんがいいならあたしも行きたいっ」
「わたしもー!」
何だったんだろうと思いつつ、授業が始まる前にトイレに行っておこうと席を立とうとした瞬間、数人の女の子達が今だ、
とばかりに少年の周りに集まってきて先程の会話を問われたので素直に返事を返し、2人ぐらいなら誘ってもいいか、と安易な考えで誘ったのだが、
周りにいた女の子達もズルい、ズルい、と言い出し、最終的には女の子達に囲まれ、[わたしが行く]という戦いへと発展していた。
少年は親譲りの顔、そして運動やスポーツまでもができてしまっているので女の子達からはちやほやされ、
スポーツをやっている上級生達にも人気なのだが、男の子達には嫉妬の対象と見られ、仲がいいのは数人程度しかいない。
それでも特に困る事がないのでそのままにしており、時々喧嘩になる事もあるがやはり姉と同様、口が達者なので言い負かしてしまい、
喧嘩すら発展しようとしても護身術を習っているので敵わず、結局男の子達は[手を出さない方がいい]という結論に至った。
「紫苑?おーい!どこにいるー?」
「じゅんばんにならんで!」
「え?」
「じゅんばんなんだから!」
「???」
「?ハルキ君?何やってるのー?」
「ああっ、じゅんばんーっ」
芸能人に握手してもらうかのように並んでいる女の子達に戻ってきた友達は何事かと驚きつつ、少年の名前を呼ぶが、女の子に邪魔され、中々近づけない。
だが、少年が気付き、すぐに友達の方へと歩いて行けば波のように後ろから付いてきて、まるで大きな魚が振り返ったかのようだ。