折原家2

□夢いっぱい
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<夢いっぱい>


6月上旬 新宿 某スーパー

愛子視点


「ママっ、ママ!見て見てー、スイカあるよー!」

「スイカっ!ママっ、スイカかってかえろー?」

『スイカかぁ……でもまだ美味しくないと思うよ?』

「いいのっ、スイカ食べたいのっ」

「スイカたべたいのっ!」


子供達と一緒にスーパーの中を歩いていると何かを発見したのか、興奮したように指さして教えてくれるのでそちらを見れば、

果物コーナーの中に季節感溢れる果物があって―――もうこんな時期か、と気温や食べ物で[夏]というものを感じた。

だが、まだ真夏というわけでもなく、売られ始めたのも最近だと思うので味としては美味しくないとは思うのだが、

双子はスイカから目を離そうとせず、動こうともせずに[スイカっ]と言い続けているので諦めてカゴの中にスイカを入れ、歩き出す。


「とーともきっと、スイカ食べたいって言ってくれるよ!」

「パパにおこられたら、あたしたちが食べたいってかってもらったって言うね!」

『う、うん……ありがとう』


二人の父親であり、私の旦那―――折原臨也の事を解っているのか、怒られる事なんて平気だ、とばかりに自信満々で胸を張る双子。

何だか情けなくも感じるが、頼もしくも思い、まあ二人に任せておけばいいか、と考えるが、それでも結局私がフォローする事になるだろうなと溜息を吐き出しつつ、買い物を終わらせていく。


「パパっ、ママをおこっちゃダメだよ!」

「おこるならぼくたちをおこらなきゃダメだよ!?」

「?……何の事?」


帰ってきて、ただいまと挨拶もそこそこに二人は何の躊躇いもなく罪を告白したが、解っていない臨也は首を傾げながら二人に問いかけると

私が片付けている横から買ってきたスイカを取り出し、パタパタと父親の前に持って行き、[かったっ]と見せたがそれでもいまいちピン、と来ないらしい臨也。


「?パパ、おこらないのー?」

「?むだづかいしちゃダメって言うのにぃー?」

「スイカが無駄遣いかどうかって事かな。それなら別にいいんじゃない?季節感もあるし、丁度スイカが食べたいなって思ってた所だしさ」

「なーんだぁ……パパ、おこるかと思ったぁ」

「とーと、すぐおこるからさぁ」

「俺はどこかの化物とは違って理不尽な事じゃ怒らないさ。……まあ、お前達の俺の仕事道具を隠すのは怒るけどね」


父親と遊びたい二人は毎日ではないにしろ、時々彼の使っている物をいない時に隠して、[ないならあそぼー]と遊びに誘ったり、

知っているのに[知らなーい]と口裏を合わせてとぼけるので、

私も臨也も困っているのだが、二人は到って真面目に[父親が必要な物]を限定して隠すのでよく彼の事を見ているな、ちょっとだけ感心する。

まあ隠す場所はかくれんぼと同じで誰にでも見つかりそうな場所に堂々と隠すので数分もしないうちに見つかって、怒られるのが恒例みたいになっているが。


「だって、とーとあそんでくれないしー」

「ママもおしごとしてない時はおこらないもーんっ」

「……君もしっかりしてくれないと困るよ?仕事で使うものは全部、必要なものばかりなんだからさ」

『ごめんごめん。二人が寂しそうにパパの物隠すから何にも言えなくて……』

「……本当、子供に弱いって言うのも考え物だねぇ。ほら、お前達こっちおいで」


悪い事だと解っていても、父親が構ってくれる事が嬉しい二人は物を隠して[構って]とアピールするが、中々そのアピールは通らずに怒られて終わってしまう。

そんな二人を見ていると私も怒らなければいけない事が鈍ってしまい、結局ずるずると続いてしまっているのだ。
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