折原家2
□色とりどりの
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『そう、かなぁ……』
「そうだよ。君はもっと自分に自信を持つべきだ。それに人生は一度きりだよ?楽しまないと損だと思うんだよねぇ」
『ま、まあ……そこは賛成、かな』
言っている事の半分も理解できなくて、納得もできなくて―――複雑な表情をする私に対し、彼はニコニコしながら言葉を加え、無理矢理納得させようとしているのがすぐに解った。
そんな彼のいつもの話を聞きながら食事を終わらせ、何気ない日常を送っていると―――
「マぁぁああマぁああああ……ひくっ……」
「ひくっ……がざぁ、ごあれだぁ……」
玄関の扉が開く音が聞こえ、子供達がまた騒がしく[ただいま]と帰ってくると思ったのだが、私の予想は大きく外れ、
こちらからでも聞こえる泣き声に私と臨也は顔を見合わせ、慌ててそちらに向かえば、折れた傘を持って泣いている双子が居て―――
少しだけ、何だそんな事か、と思ってしまったのは内緒だ。
「どうしてそうなったのか教えてくれる?」
「ひくっ……ひくっ……」
「あたし、わるくないもん……っ、大事にしてたもんっ、ひくっ……」
「別に怒ってるわけじゃないよ。何があったのか教えてくれないと解らないだろう?」
「風、つよくてね……ビューって……かさ、おれちゃったの……」
「おれないようにってがんばったんだよ……?だけどね、おれちゃった……」
泣きながら訴えていたが、段々と落ち着いてきたのか、彼の目を真っ直ぐ見て[自分達は悪くない]と説明していくと何となく今日の天気と二人の格好を見て臨也も私も理解し、
[とりあえずお風呂に入ろうか]という臨也の指示により、慌ててお風呂を沸かし、濡れた子供達を入れると、
しゅん、とした顔で出てくるので[大丈夫だよ]と笑えば、安心したのかまた泣き出す双子。
「パパ、ごめんなさい……」
「ごめんなさい……」
「謝る事じゃないよ。今日は風が強くて雨も降っていたんだ。傘をさすのは当然で、それに振り回されるのも当然だ。
それで壊れたとなれば、俺は何も言わないし、寧ろお前達が怪我をしていないかの方が心配だよ」
「だいじょうぶっ、けがしてないよ!」
「へいきっ」
「そう、それならいいんだよ。……そうなると新しい傘が必要だねぇ」
「お年玉からかっていいよ!」
「あたしたちがこわしちゃったんだもん!」
やっと落ち着いたのか、顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた顔をタオルで拭いて服など着替えるのを待ち、
一緒に臨也がいる所まで行くと、おずおずと父親の前にやってきて壊してしまった事を謝ると全く気にしていないのか、
優しく笑う姿に安堵し、どこも怪我をしていない事を話せば、彼も安堵したように笑い、次の傘について考えている様だ。
「そういうのはね、もっとお金をもらったり、貯金してから言う言葉だよ。それにお年玉で傘を買ったりしたら、殆ど傘で消える事になると思うけど……それでもいいのかな」
「いやー、お年玉大事にするのっ」
「いっぱいいっぱいためるもんっ」
「そうだろう?だから今度の休みにみんなで傘を買いに行こうか」
「!いいのっ!?」
「!あたらしいかさ、かうっ!」
「いいよ。寧ろ、最初からそのつもりだったんだけどね」
天災で壊れてしまったものを子供達にどうにかしろ、なんてまだ言えないし、お金だって殆ど持っていないに近い。
臨也が甘やかしてお菓子やら玩具などは他の子供よりは持っているとは思うが、それ以外は[物を大事にできないのなら買う必要はない]と言わんばかりに無駄遣いはしないのだ。