折原家2
□ゲーム機
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「まあそれはいいとして……っ、やっぱり機会って大事だと思うんだよねー。私も最初アニメを見た時はすっごく興奮したし、
こんなに面白いものをどうして今まで私は知らなかったんだろう、って思っちゃったぐらいだよー。だからさ、はい、これ。
貸してあげる!ちゃんと双子ちゃんの分あるから喧嘩はしないと思うし、もし気に入ったらあげてもいいぐらいだし!」
『え、ちょっ、待ってください……話が見えてこないって言うか……なんで二つも……』
興奮した目で自分の好きな物を語る友人はとてもキラキラ輝いていて―――本当にアニメが好きなんだな、と改めて思ったのも束の間、
鞄の中に入っていたであろう2つのゲーム機を出し、私の前に置いた。全くそんな事なんて話していなかったし、
呼ばれたのだって[久しぶりに会わない?色々話したいしさ]と言われたぐらいで―――いつものようにどのアニメがお気に入りなのか、最近どんな事を遊馬崎さん達と話したのか、
何が面白かったのか、などなど殆ど私が聞いているばかりなのだが、話す内容が私の興味があるような事や、こういうのが好きだと思って、
と本を貸してくれたりと気を遣ってくれるので飽きずにこうやって会う事ができるのだ。まあ私も彼女の話が好きでここに来ている、という部分も大きいのだが。
「ちょーっとやらかしちゃってさー、店舗限定版とネットで注文したのが一緒だったのよー。しかもさ、店舗が秋葉原限定とか聞いてないってなっちゃって……
それが解ったのがその当日で!もうどうしようってなってたんだけど、渡草っちが車出してくれて
とりあえず秋葉原限定は手に入れたんだけど……同じのが2つになっちゃってさー、どうしようかなって思ってたってわけよ!
しかも同じ過ちをゆまっちと一緒にやっちゃったから同じのが2つ、ってわけ。だから全然気にしなくていいよ!
気軽な感じで遊んでくれていいし、つまらなくなったら今度会った時に返してくれてもいいし……あ、でも、機会を与えたいって思ったのは本当。
……きっとイザイザだけじゃ片寄った人間になっちゃうと思うんだよね。良い方にも悪い方にも……だから適度にイザイザじゃない、全く違う事も双子ちゃん達に教えてあげたいんだよねー」
喜んだり、彼の性格をよく知っているのか溜息を吐き出したり、忙しい狩沢さんの言葉に二人の事をよく見てくれているんだな、と思いつつ、
あまり会う機会もないのにどうしてそこまで二人の事を考えてくれているのか―――そう問いかけると、火が付いたのか、
つらつらと子供達にもこの素晴らしい世界を知ってもらい、いつか一緒にコスプレしたり、同人即売会にも行ってみたいらしい。
ある意味執念、というのか目標みたいな狩沢さんの言葉に苦笑いしか出なかったが、
もしこのまま彼女に会わずに育って行けばアニメに触れる機会があったとしても、コスプレなどに触れる機会なんて殆どないだろう。
―――小学生で二人ぐらいじゃないかな、色々な事を知ってるのって……。
親が好きな物であれば、子供も一緒に楽しむかもしれないが、そこまで知らなければ大きくなってから私のように色々な世界がある事を知るだろう。
だが、双子の場合、友人達が色々な事を子供達に教えたがるので既に二人は小学生としては珍しい方ではないかと思っている。
まあ、今の時代パソコンや携帯もあるので気になった事があれば簡単に調べる事も、ネットで外の世界を知る事だってできてしまうのだが。
『……。ていうかどんなゲームなんですか?流石に乙女ゲームを二人に渡せませんけど……』
「そこら辺は私だって分かってるって![モンクエ]って知ってる?」
『モン、クエ?』
「えーとね、[モンスタークエスト]っていうの。それを省略してモンクエ。よくあるRPGだよ」
狩沢さんのイメージが乙女系のゲームやアニメだと思っているので、借りるゲームもそうなのでは、と思ったのだがケラケラ笑いながらそれを否定した。