折原家2
□おなまえは?
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そんな子猫の姿を見ていたのだが、ずっとハラハラしたり、安心したり、ニヤニヤしたり、ソファに座りながら表情を変えていたのだが、
臨也は少し気になる、程度にしか思っていないのか携帯を見ているか、テーブルにあるノートパソコンを持ち出して私の隣に座って何かを見ているだけで、数十分に一回、
[忙しそうだね、君]と楽しそうに声をかけてきたり、[あそこにいられるのは困るなぁ]と子猫を見て独り言を呟いていたりしていた。
―――猫が嫌い、ってわけじゃなさそうなんだけどなぁ……。
動物が好き、なのかそれとも可愛いものが好きなのかは解らないが、スリッパだったり、ちょっとした小物だったり、可愛らしいデザインのものが多く、
最初彼の寝室に入った時は[動物が好きなのかな]とか[猫が多いし、猫が好きなのかな]と思ったぐらいだが、
子猫がちょっとこちらが気になったのかソファに飛び乗ってこっちに来ても、臨也は知らん顔をしていた。
『……もしかしてパパ、猫より犬とかが良かった?』
「そういう冗談は止めて欲しいなぁ。ていうか、どうして君はそんな突拍子もない事を聞いてくるんだい?
俺が猫が好きでも好きじゃなくても君には関係無い事だろう?こうやって君達の望みは叶えられたんだから」
『……やっぱり私はパパにも可愛がって欲しいよ。折角の新しい家族だよ?大事にしてあげなきゃ……』
動物アレルギーがあるとか、昔のトラウマがあるとか、そういうものがあるなら仕方ない部分もあるし、アレルギーだったら酷い場合、
呼吸ができなくなってしまうかもしれないので手放さなければいけないが、彼がそんなアレルギーを持っている話は友人である岸谷さんから聞いた事がないし、
時々くしゃみをする事があっても、風邪を引いているか、誰かに噂されているか単に細かい埃を吸い込んだか、のどれかなので気にもしていない。
それに子供達も小さい時にきちんと検査し、今の所アレルギーは見つからないらしいので安心して子猫を抱かせたり、ご飯を作ったりする事ができる。
「……君が思ってる以上にきちんと子猫の事は考えてるから気にしなくていいよ。俺だって別に猫が嫌い、ってわけじゃないからさ。
あ、でも犬は好きじゃないかな……ちょっとトラウマがあってね。それ以外なら歓迎するんだけどねぇ」
『パパ、猫みたいだもんねー、あ、だから猫に好かれるのかな……』
「とーと、すぐどっかおでかけしちゃうもんねー」
「ママがパパのこと気まぐれって言ってたよっ」
『そういう事は言わなくていいの!それで……名前決めた?』
自分が気分が良い時は甘えてくるくせに、嫌な時は[構うな]とばかりに話しかけてこないし、何も言わずに出かけてしまう事もあるのだが、
それも数十分もせずに直るのか、寂しくなるのか解らないが、大体何も言わずに出かけた時はすぐ帰ってくる。
マンションの最上階から1階に下りただけじゃないの、と思うぐらいにすぐ帰ってきて何事もなく私と過ごしているのだから本当に彼は気まぐれだ。
まあ遅くなる時は私に言えない仕事か、自分の興味が引く事があって[機嫌が悪い]という事すら忘れて人間観察をしているのかもしれないが。
「お名前……むずかしいねー」
「うーん、フワフワだからー、フワちゃんっ!」
『フワちゃん……それが第一候補でいい?』
「うーん……やっぱりもうちょっとかんがえるー」
「じゃあねー、フフっ!」
『……何で?』
「フワフワだから!」
『却下!』
子供達は私との約束を守り、子猫を抱きたい気持ちを押さえて遠くから見つめており、色々考えている様だが、
なかなか[これ]というものが思いつかないらしく、名前を出しては[もうちょっとかんがえる]と言って、頭を抱えている。