折原家2
□おなまえは?
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前もニュースでそんな事をやっていたので、いくら躾(シツケ)をしていても[本能]というものがある事を私達は忘れてはいけないのかもしれない。
私がポロ、と吐き出した言葉に彼は苦笑しながら[どうだろうねぇ]と子猫を見ていると僅かに慣れてきたのか、
臨也がよく座っている椅子に飛び乗ろうとしたり、テーブルに乗って歩き回ったり忙しなく、少しでもここがどういう所なのか知ろうとしているのが解った。
『テーブルの上は乗っちゃダメ、って怒った方がいいのかな……。やっぱり最初が肝心、って言うし……』
「多分今怒っても猫の記憶には残らないと思うよ。……もし怒るつもりなら猫がテーブルの上に乗った時に怒った方がいいんじゃないかな」
『……臨也は?』
「俺は撫でたり、抱っこしたり、勿論世話もしないって飼う前に言ったよね?だからこういう事は君に任せるよ。あ、だからって俺の仕事の邪魔をするような事はしないでね」
『……難しい注文だなぁ……』
いくら子猫に言い聞かせたとしても、子猫自身が解ってくれなければ怒っても意味がない。
子供達ならば[パパの仕事の邪魔はしちゃダメ]と言い聞かせれば解ってくれるのだが、まだまだ小さな子猫だ。
遊びたい盛りだと思うし、色々な物に興味が出てきてこっちが危ない、と思うような事でも簡単にやってしまうだろう。なので、少しの失敗や失態は許してあげて欲しい。
―――子供がもう一人増えたみたい……。
言葉の通じない子供。
それでも私達の心を癒してくれる大事な家族。
それが今、家の中を歩き回り、フワフワな尻尾を揺らしているのがとても可愛らしい。
『あ、そうだ。名前、考えた?』
「何で俺が。俺は関係無いだろう?俺が猫を買った理由をもう忘れたの?」
『だ、だってほら……子供達の名前も臨也が付けてくれたんだし……3人目の子供って事で』
「……子供は3人欲しい所だよねぇ、それなら考えておくよ。まさか君がそんなに乗り気だとは思わなかったなぁ。
……ま、猫なんてすぐ大きくなって二人の姉になるよ」
『ちょっ、そういう意味じゃなくて……!臨也の言う通りだけどっ、やっぱり、ね?まだまだ一番下の妹なんだから……って!絶対何も考えてないでしょっ』
一番大事な子猫の名前。
ふとまだ決めていない事を思い出し、彼ならば考えているかもしれないと期待を込めた目で見つめつつ問いかければ、投げやりに言葉を返され、ちょっとだけガッカリした。
それでも、彼は子猫を飼う事を最後まで否定していたのを無理矢理のように納得させ、こうやって家に入れる事を許可してくれたのでそれだけでも感謝しなければいけないのだが、
臨也ならばさり気なく考えていてくれたかな、と思ったのも本音だ。子供達の事だって[考えておく]と言ってから何も言わずに、生まれたその日に名前を教えてくれたのだから。
「考えてない、って言うより、君達に全て任せようかな、と思ってさ。ほら、何もしないのに名前だけ俺が決めたら不公平じゃない?
それに俺達が勝手に名付けたら子供達が可哀想だよ。こういう事は公平に、ね?」
『……じゃあ一人1つずつ名前を考える、って事でいいよね!その中で良かったものを名前にすれば不公平じゃないし。という事で、名前考えておいてね』
「……解ったよ」
―――――――……
数時間後
愛子視点
「お名前っ!?」
「ネコのお名前かぁ……。うーん、うーん……」
『何個でもいいよ。でも、最低でも1つは考えてね』
子供達が慌てて帰ってくる頃には子猫はすっかり自分の家気分であり、ソファの上か臨也の椅子の下がお気に入りのようだ。
最初は何度か椅子に乗ろうとしていたようだが、まだまだ身体が小さいので登れずに諦めたようで、足を入れるスペースが他の所より暗いのでそこに落ち着いたらしい。