折原家2

□池袋散策
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「……一瞬誰かと思ったよ。俺の為にオシャレしてくれたのかい?」

『……まあね。今年の初デートでしょ?折角だから初めてのデートに向かう女の子、っていう感じでオシャレしたくてさ』

「……。……俺は先に池袋に行くから、11時に池袋駅東口で待ち合わせしようか。俺も久しぶりに初デートの感覚を味わいたくなってさ」

『え……それって意味ある?』

「一緒に暮らしてる以上、こうするしかないじゃないか。それじゃあ俺は先に出発するよ」

『ちょ……っ』


私はただ、[初心]というか新しい服も買ってリップや簡単な物ではあるが、化粧品が揃って―――

喜んでもらいたくて、機会があったのでそれを使ってみた、というだけだったのだが、彼は面白い行事を見つけた、

とばかりに笑顔で玄関から扉を開けて外に出て行ってしまい、1人、ポツンと残されてしまった。


確かに初デートに待ち合わせ、というのは定番なのかもしれないが、そこまでこだわらなくてもいいのではないかと考えるが、既に外に出て行ってしまった彼を引き留め、

一緒に行く、と言うのも何だか気持ちが冷めてしまうような気がして溜息を吐き出し、臨也の言った[11時に池袋駅東口]に行く事にした。


―――まだ時間あるし、ちょっとだけ化粧してみようかな……。


時計を見ればまだ時間に余裕があり、新宿と池袋、というのは電車で行けば短い時間で行けるので化粧する機会は少なさそうだが、

ちょっとした練習ぐらいはしておいた方が将来的に役に立つだろう判断し、化粧をする為にもう一度2階へと上がっていく。

―――――――……

数十分後

愛子視点


―――ヤバっ、遅刻する……っ!


どうやって使えばいいのか解らず、化粧道具を持って1階に下り、パソコンで調べたり、

それを見ながら化粧してみたりしているといつの間にか時間は迫ってきており、電車の待ち時間などを考えると遅刻してしまうかもしれない。

あんなにのんびりする時間があったのに―――と怒られてしまいそうだが、これも[初デート]では定番なのだろう。

そう自分を納得させ、後できちんと謝ろうと決めて、慌てるように自宅がある新宿を後にし、飛び乗るように電車に乗り込み、一息つく。


いくら外が寒いからと言っても、慌てるように転ばないように注意しつつ、小走りをしていれば汗を掻いてしまうわけで―――

鞄の中からハンカチを取り出し、化粧が落ちないように汗を拭っていく。やっと池袋に着いた頃には既に約束の11時を過ぎており、

機嫌悪いだろうな、と気が重くなるのを感じながら東口に向かったのだが、人が多くて見つからない。


―――電話した方がいいかな……。

―――でも、遅刻しちゃったし……何か言いにくい……。


電車に乗っている時に[11時丁度ぐらいには着くと思うよ]と言ってしまった結果がこれだ。

もしかしたら彼も探しているかもしれないが、あまり動き回って迷子になるのも良くないので邪魔にならない程度の柱に寄りかかり、キョロキョロと周りを探していると―――


「あれこの女、前にあの平和島静雄と一緒に居た女だよな」

「アイツと一緒に居たとかマジかよ。つー事は、静雄の女か?」

「いや、確か折原臨也、とか言う情報屋の女らしいぜ」

「やっべー、何、二又してんの?いいよなー、有名ってだけで女連れて歩けるとかよー」

「前もロシア美人が静雄に近付いて、今は一緒に歩いてるらしいしよー、羨ましいぜ」


2組らしき男が私を取り囲むように話をしており、突然攫われる、というわけではなさそうだが、女1人と男2人では流石にこの後に何かあってもどうする事も出来ない。
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