折原家2

□カッコイイ父親
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「とーと、おしごと!?」

「見るっ」

「…………」


立ち上がった事に二人も一緒になって立ち上がり、親鳥についていく小鳥のように臨也と同じ動きをする双子。

何だか面白くて―――臨也のいつもの椅子は一つしかないので、仕方なく近くの子供達でも座れる椅子を両側に持って来て彼のパソコンを見つめている。


「こーら。これは見ちゃダメだよ」

「えええぇぇええ……。パパのおしごと見てるんだよー?」

「とーとのケチー」


まだ小学生の双子が彼のパソコンを見て理解できるかどうかなんて解りきった事なのだが、両手でパソコンの画面を隠すように覆うので二人からは大きな反感を買ったようだ。


「それに、別に同じように動かなくても仕事してる時は殆ど見える範囲に居るんだから座ってても見えるんじゃないかな」

「とーとと同じことしたいのっ!」

「パパのおしごと知りたいっ」


いくら彼の借りているマンションが広いからと言ってもここの事務所として使っている部屋の見通しはよく、台所かトイレか、お風呂ぐらいしか見えない場所は無い。

台所だって顔は見えるし、少し動けば全てが見えてしまうぐらいなのでわざわざ同じ動きをしてついてこなくてもいい、

と臨也は言いたいようだが、子供達は解っていても同じようにやりたいようだ。

いつもは母親にべったりなくせに―――と臨也の言いたい事が何となく解ったが、今日は彼の仕事について調べる事が目的なので[やらせてあげれば?]と言えば、溜息を吐き出す臨也。


「……解ったよ。でも、パソコンの画面を見るのは無しだよ。これでクセになって覗かれても困るし」

「「…………」」


私もあまり見た事のない彼のパソコン。

きちんと情報が管理されているとは思うのだが、仕事をする、という事はその管理している情報を画面に映すという事だ。

読めないにしてもここで許可を出せば、気軽にパソコンを見るようになってしまうのではないか、と臨也は考えている様だ。


『……パパのパソコン、皆の秘密があるんだって。皆の秘密はパパだけの秘密なんだよ』

「……ズルい」

「ぼくも知りたい」

『だーめ。パパが一生懸命みんなの秘密を集めてきてバラしませんよ、

ってみんなと約束してあのパソコンに入ってるのに二人が見ちゃったらパパ、お怪我しちゃうかもしれないけどそれでもいい?』

「……やだぁ」

「とーと、おけがしちゃダメーっ」

『でしょー?だから反対側からパパのお仕事、見学しよっか』

「「うんっ」」


本来どうなっているかは解らないが、優しい双子が[怪我をする]と言えばどんな反応をするのかぐらい知っているつもりなので、

可哀想だが脅すようにそういって椅子を動かすように言うと持ってきていた椅子を反対側に持って行き、嬉しそうに彼の顔を見ている。


「……悪かったね。俺がきちんと説明すれば良かったのに」

『いいよ、別に。……パパの仕事がたくさんの情報の上に成り立ってる事は知ってるから』

「……出来のいい妻で助かるよ」


悪い情報から何気ない情報まで様々だろう。

他の誰もが明日には忘れてしまうようなものでも彼は必要であれば記憶しているし、必要なくなればすぐに忘れる。

便利な頭だな、と思いつつ、そういう取捨選択ができる人間だからこそ情報屋の仕事をしていられるんだろうな、とも思う。

後は冷静な判断とか、饒舌な言葉とか、それなりの礼儀とか、仕事をするのも彼だからこそ、な部分も多い。


―――もっとそういうのが解る場面とかないのかな……。


情報屋は誰もが簡単になれる仕事ではない事を子供達にも分かって欲しい。[折原臨也]だからこそこういう仕事ができるのだと解って欲しい。
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