折原家2
□カッコイイ父親
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<カッコイイ父親>
新宿 某マンション
愛子視点
「ねーパパー?」
「とーとってカッコイイってところあるー?」
「?どういう事かな」
冬休み。
子供達は宿題をやったり、友達と遊びに行くのに忙しいらしく、そして旦那であり双子の父親でもある男も仕事で出掛ける事も多く、
揃っている時間が少ないのが最近の悩みだが、ずっと縛っている事なんてできないので諦めて私は家の中で帰りを待つ、という事が多い。
私もどこかに出掛けたいとは思うのだが、旦那に言えば[君は家に居てよ]と否定する為、結局冬休みが終盤になっても出掛けられないままだ。
―――私もどこか行きたいなぁ。
仕事でどこにも行けない、というのなら仕方ないし、諦めもつくが、私の場合は旦那の我儘なので諦められないのだが、
最近は仕事で何かあったのか、ストレスが堪ってるようで何も言わずに私に甘えてくる事が多く、そんな中で出掛けたい、とは口に出来ないので黙って彼のやりたいようにさせている。
「しゅくだいでねー、お父さんのおしごとをしらべないといけないんだってー」
「だからねー、とーとのおしごとおしえてー!」
「……そういう事か。何となく理解したけど、何でカッコイイところを聞いてきたんだい?」
「パパのおしごと、カッコいいんだよ!ってともだちにはなしたから、カッコイイってところ、いーーーっぱいかくの!」
私の膝の上で休憩中の旦那。
溜息しか出ないが、そんな彼―――折原臨也も私は好きなので頭を撫でながらゆっくりとした時間を過ごしていると、何かの紙を持って臨也に話しかける双子。
何だろう、と見れば双子が言った通り、父親の仕事について調べてくるらしく、それも冬休みの宿題のようだ。
―――……臨也の仕事を調べる……。
―――大丈夫かな……。
あまり世間から褒められたものではない臨也の仕事を、小学校の宿題に書くのはどうかと思うのだが、
彼は特にそう言った危機感はないのか、ゆっくりと身体を起き上がらせ、二人から受け取った宿題を見つめている。
「カッコいい所、ねぇ。そう言われても俺の仕事なんて地道なものだから友達からカッコイイ、なんて言われないかもしれないよ?」
「ええええぇぇぇえ……。じょうほう屋さんってカッコよくないのー!?」
「ガッカリー……」
「……そこまで言わなくてもいいんじゃないかな」
彼の仕事は情報を集めて、求めている人間にお金を貰って渡す、という嫌な人が聞いたら最低な行為なので、子供達が言う[カッコいい]というのは難しいかもしれない。
それに大半は椅子に座ってパソコンと睨めっこしているような事も多いので探偵のように事件を解決するわけでもないので華やかさも無い。
―――あれ……子供達に誇れる所、なくない?
そう考えると臨也の仕事、というのは大きくなった双子に自慢して言えるような仕事ではない事が解り、私もガッカリする。
二人に散々言われ、臨也も流石に言い返せないらしく、困った表情をしている。
『じゃあ、パパを一日ずーっと見てみる、ってのはどう?もしかしたらカッコイイ、って思える事があるかもしれないよ?」
「うんっ!カッコいいかな!?」
「とーとのおしごと、カッコイイところいーっぱい見つけるね!」
「……勝手にしてくれ」
フォローするつもりでそう告げると子供達は大きく頷いて臨也と同じポーズで父親を見つめ、[一日ずっと見ている]という事にやめてほしいが、宿題だからと溜息を吐き出し、賛成する臨也。
『私はパパの仕事、すっごくカッコイイと思う。だから……二人にも解ってもらえるように頑張ってね、情報屋さん?』
「……できるだけの事はしてみるよ」
私も全ての事を知っているわけではないので何とも言えないが、決して否定してもいいものでもないので笑ってそう言うともう一度溜息を吐き出し、立ち上がった。