折原家2
□今年は?
2ページ/11ページ
時々こちらを見る視線に気付いては、きっと竜ヶ峰君も同じような気持ちなんだろうな―――なんて思ってみたり。
こんな美人な奥さんを口説き落とす、というか、どういう経緯で付き合い始め、結婚したのかいまいち解らないが、きっとそれなりに苦労しているのだろう。
―――……私と反対な感じ……。
臨也がカッコいいので一緒に居ると自然と女の人からの視線が集まり、どうしてあんな女が―――と影でコソコソ言われるのは相手が美男美女であるから仕方ないのかもしれないが。
きっと竜ヶ峰君も男からの視線が集まり、何であの男が―――と言われ続けているのだろう。ある意味似たような夫婦だからこそ、同情のように話を聞いていられるのかもしれないが。
そんな話をした事を思い出しつつ、子供達へのプレゼントから料理など色々考えたい事があるのだが、どうしてこうも臨也は他人に意見を出させようとするのだろうか。
意見を出し、否定する人間ではないのでそれだけは良い所なのかもしれないが、毎年毎年同じではつまらない。
新しいものを求めようと思っても、お金を出すのは臨也なのでそんな我儘は言えないし、料理を頑張っても子供達には[おいしい]という感想だと思うし、
何を言ってくれたら自分が満足するのか自分でも分からないので結局同じような料理を作るのだろう。
『ねえ、臨也ぁ……私は臨也の意見が聞きたいんだけどなぁ……』
「俺の意見、ねぇ。どこかに出掛ける、っていうのは?」
『……人多そう』
「……俺に意見を求めた癖に否定するなら意見なんていらないじゃないか」
『そ、そうじゃないっ、そうじゃないから!……家族で過ごすクリスマスにしたいから……それで、ね?』
確かに一度は考える事だが、今回はそうじゃなくて私が求めているのは家族で、この家で過ごすクリスマスの事なのでどこかに出掛ける、というのは違うのだ。
こういう物が食べたいとか、ケーキはこんなのがいいとか、そういう意見が欲しい。
そういうと[今年はいいのかい?]といつも友人達とクリスマスがしたい、というのでそれについて問いかけてきた。
『……そりゃあ友達とも過ごしたいけど……やっぱり、ね』
「……そう、その言葉が聞けて満足だよ。それまでに俺も準備を進めようかな」
『準備って何を……』
大好きな旦那がいて、大好きな子供達がいて―――どれかを選んで一番にする事はできないが、それでも一番近くにいて、頼りになるのは家族である3人だけだ。
彼が何を考えているのかは解らないが、それでも私達を楽しませてくれる事には違いないので楽しみにしておく事にしよう。
「なんだろうね。クリスマスまでのお楽しみ、って事でいいんじゃないかな」
『よくない……!ていうか、臨也の意見は?』
「……そうだな、こうしよう。君は君の考えるクリスマスの準備をする、っていうのはどうかな。あ、誰かに意見を求める、っていうのは無しだよ」
『ええええぇぇぇぇええ……』
ただ彼の意見を含め、それを元に準備をしようと思っていたのだが、彼がまた面倒な事を言い出して―――心底嫌そうな声を出すと[何が気に入らないの?]と不思議そうな顔をしている。
『気に入らないよっ、何でそんな家で隠し芸大会みたいな事しないといけないの……っ!?』
「隠し芸……いいねぇ、それ!」
『そうじゃなくて……!』
例えで話しただけなのだが、彼は[隠し芸大会]という単語が気に入ったらしく、ノリノリで[それならもっと力を入れないとね]と言い出し、大きな声で遮ると僅かに不満そうに問いかけてきた。