折原家2
□今年は?
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<今年は?>
12月上旬
愛子視点
『ねえ、そろそろクリスマスだけど今年はどうする?』
「そうだねぇ、君はどうしたい?」
『どうしたい、って言われても……』
毎年のように旦那や子供達と共に過ごすクリスマス。
そして毎年のように友人達が誘ってくれるのだが、あまり一緒に過ごす事ができなくて―――相手にも家族がいるので遊びに行く時に会って話をするぐらいしか会う事がなくなってしまった。
それでも私や子供達の心配をしてくれたり、時々人生相談のように電話をしてくれるのであまり離れているような気もしない。
前もどうしたら子供を授かる事ができるのか―――という事を友人の一人である杏里ちゃんに真面目な顔で聞かれ、堪えられなくなった私は狩沢さんを呼び、その事を話せば、
喫茶店であるにも関わらず、恥ずかしげも無く色々と濃厚な話をしてくれて―――私と杏里ちゃんは顔を真っ赤にしながら聞いていた。
――「……でもさー、杏里ちゃんも変わったよねー。会った時の杏里ちゃんなんて美少女眼鏡っ子+訳あり、って感じだったのに今はこーんなにエロくなっちゃってさぁー」
――「そ、そんな事ありません……!」
――「そんな事あるよぉー。こことかーこことかー、みかプーに毎日のように触られてるんでしょー?」
――「っ……か、狩沢さん……っ」
狩沢さんを呼んだ事をこの時後悔し、杏里ちゃんに心の底から謝った。
それぐらい狩沢さんは杏里ちゃんのあちこちを触っており、それに彼女も反応するように顔を染めている。
そんな危ない現場を止めるかのように声を出せば、その手を止めてニヤニヤしながら私に顔を向けた。
――「愛子っちもイザイザに毎日のように触られてるんでしょー?美女二人をいいようにしてるあの二人が許せないわ……。あ、でもイザイザとミカミカで……でも、私としては……」
――『か、狩沢さんっ』
別の方向へと話を進めようとする狩沢さんに慌ててもう一度声をかければ、[ごめんねー]と笑いつつ、僅かに真剣な表情で杏里ちゃんに向き直った。
――「でも、焦っても仕方ないと思うよ。愛子っちはポンポン、と二人も子供作っちゃったわけだけどできない人は本当にできない、って聞くしさ。
今はみかプーとの時間を大事にすればいいんじゃないかな」
――「……私もそう思うんです。……それでもやっぱり私は帝人君の子供が欲しくて……きっと本当の繋がりが欲しいんだと思います」
――『本当の繋がり、か……。何となく解る気がする……』
結婚していても、相手がどれだけ自分を愛してくれていても、結局は他人で―――何度も何度も私が考えてきた事だ。
杏里ちゃんとは過去の境遇が似ているからなのか、どうして竜ヶ峰君との子供が欲しいのか、というのが何となく解る。
ある意味[子供]というのは私と他人である旦那―――折原臨也を引き留める為の紐みたいなものなのだ。
もし仮に臨也に捨てられてしまっても、私と彼の血を分けた子供が居て、離れてしまっても子供達を見る度に捨てた彼の事を思い出す。
それが嫌で子供を引き取らない母親もいるらしいが、それが自分だったら二人とも立派に育て上げると誓う。
まだ杏里ちゃんには竜ヶ峰君を引き留める紐がないので、捨てられる、という事はないとは思うが、目に見える物が欲しいのだろう。
――「……でもね杏里ちゃん。みかプーはそんなに焦ってないと思うんだ。もしかしたら一生杏里ちゃんと二人でいいと思ってるかもしれないよ?」
――「でも……」
――「みかプーは杏里ちゃんの事、すっっっっごく好きだと思うし、高校で出会ってからこうやって結婚するなんて早々ないと思う。だから自信持って!
何度も言うけど、杏里ちゃんは可愛いんだから!寧ろ、みかプーが心配してると思うよ?」
――『竜ヶ峰君、心配性だから……』
美少女、と言われていた杏里ちゃんは大人になって更に女らしくなって―――美女、といっても過言ではないぐらいであり、一緒に座っている事が恥ずかしいぐらいだ。