折原家2
□運動の秋
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呆れて何も言えなくなり、溜息を吐き出す私と[行こうよーっ]と既に出掛ける気満々の双子と、不機嫌になりかけている臨也がいて、何だか変な感じだ。
いつまで経っても決まらないまま時間だけが過ぎていき、そろそろお昼ご飯でも作ろうか、と先程の事を置いておこうとしたのだが―――
「いっしょにうんどうしようよぉー!」
「パパ、さっきうんどうするって言ったぁっ!」
「それなのに何でシズちゃんとはダメ、って言うのー!?」
「なかまはずれにしちゃダメって先生言ってたよー!」
「…………」
双子の猛攻撃、というのか、息の合った言葉で大きな声で父親に向かって吐き出し、それに耳を塞ぐような形で見ないフリをする臨也。
どっちが大人なんだ―――と言いたくなるような光景に更に溜息を吐き出して、早く諦めて池袋に行きたいな、なんて事を考えていた。
―――……まあ、二人が一緒に運動してる光景なんて想像もできないんだけどね。
これまで何度か静雄さんと臨也で行動した事はあるが、それぞれに目的があってその目的の為に動いている―――
という感じだったので今回のように殆ど遊びのような運動なんてお互いにしたくはないだろう。
臨也の目を盗んで携帯で静雄さんにメールし、子供達と一緒に、までは了承してくれたのだが臨也、まで続くと途端に嫌がる。
彼もそういう事なのだろう。だからと言って、いつまでもこのままではいけないので臨也に向かって―――
『じゃあ私達だけで静雄さんの所に運動してくるね』
と言うと今まで耳を塞いでいた臨也が、その手を離し、[君までそんな事を言うのかい?]と声音を低くして言う。
『そりゃあね。パパが諦めるしか道がない事解ってるくせに、どうにかしてでも子供達に勝とうとするんだから仕方ないでしょ?』
「……君が俺の味方になってくれればいいんじゃないのかな。そうすれば子供達だって……」
『二人が頑固だっていうのはパパが一番解ってるんじゃないの?私がいくら言ったって聞いてくれないよ』
二人は臨也も認める頑固であり、彼に似てどうにかしてでも自分達の意見を相手に認めさせようとするので、とても厄介なのだ。
そうなればいくら私でも話を聞いてくれないし、泣きそうになりながら[ママぁ]と言われる事に弱いので臨也程強く否定できない。
「そう言いながら君、子供達の意見に賛成なんだろう?」
『え、まっ、まあ……。私だって久しぶりに出掛けたいし……遊びたいし……』
秋、というのは何でもある。
食欲の秋、芸術の秋、運動の秋―――なんて言われ、行楽シーズンと呼ばれて山に登りに行く、なんて人も多いだろう。
秋はとても快適で、家の中にいるのが勿体ない。晴れた日は洗濯物を余計に回したくなるし、買い物もちょっと遠回りして帰ろうかな、という気分にさせてくれる季節だ。
それなのに彼はどこにも行かせてくれないし、早く帰ってこい―――なんて言うのだからこういう時ぐらい子供達と一緒になって[池袋に行きたい]と言ってもバチは当たらないだろう。
結局彼が撒いた種のおかげで臨也には味方、というものが存在せず、子供達も折れない為、溜息を吐きながら肯定するしかないのだ。
「……だからってさ、シズちゃんはないだろう?ドタチンや帝人君達ならまだ許すよ、俺も寛大な心で受け入れようじゃないか。けど、アイツは駄目だ」
『はいはい、もうそれも聞き飽きましたっ!それで?私達3人で行くか、臨也も一緒に行くか……どっちがいい?』
「……行かない、っていう選択肢は君達の中にはないんだね」
ここまで来たら、私だって子供達のように声を大きくして[池袋に行きたい]と、臨也に抵抗するように言うと[いつも通り]の結果が待っていた。