折原家2

□運動の秋
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それに最近ずっと子供達は家の中か、学校しか行動できなかったのでどこかに行って、思い切り遊びたい、と思ってもおかしくない筈だ。

父親と遊べる機会だってそこまで多いわけでもないし、毎回のように否定し、[家の中で遊びな]と言う為、どうにかしてでも外に行きたかったのだろう。

そんな子供達の心を代弁するように私が言葉にした為、二人はとても嬉しそうな顔で[こうえん行くー?]と臨也にどこに行くのか聞いている。


「公園か。それでもいいけど、お前達はそれでもいいのかい?もっとどこか遊びに行ける所でもいいんだよ?」

「こうえんがいい!」

「こうえんでいっぱい走りたいもん!」

「……安上がりで助かるよ」


臨也としては子供達にお金を使う事に躊躇いはないし、[重要な事]だと思っている為、もっとどこかに行きたい、

と言ってくれた方がいいと思っているのかもしれないが、子供達は結局両親とどこかに行ければそれでいいらしいのでお金なんてどうでもいいのだ。


―――まあ、玩具はきっちり欲しがるけどね……。


『そういう事言わないの。パパも近くの公園の方が助かるでしょ?』

「……まあね。もしこれで池袋に行きたい、なんて言い出したらどうしようかと思ったよ」

「!シズちゃん!」

「!パパもしずおさんといっしょにうんどうするのー!?」

「しないよ。アイツが一方的に俺を追いかけてくるんだ」


[池袋]という単語に二人は思い出したかのように彼の天敵の名前を出し、臨也は僅かに顔をひきつらせつつ、[行かないからね]という雰囲気を出している。


―――変な事言うから……。


子供達は天敵である平和島静雄さんにとても懐いており、事あるごとに[いけぶくろに行きたいっ]と彼に会いたいアピールをするのだが、

臨也がそれをとても嫌がっており、その時の彼は我儘な子供達ですら文句を言わない程に機嫌が悪い。

だが、今回は臨也から[池袋]という単語を出したので子供達が静雄さんの名前を出すのは自然な事だろう。


「ねえ、パパ!しずおさんもいっしょにうんどうしよー!」

「シズちゃんもとーとといっしょで、足はやいのかなぁ」

「……何でそうなるのかなぁ」

『パパが池袋、なんて言うからでしょ、自業自得』

「俺はそういう意味で言ったわけじゃないんだけどなぁ」


盛り上がる二人に先程まで乗り気になっていた臨也の気分は段々と落ちていき、今では[本当に行くの?]とばかりにソファに深く腰掛け、肘をついている。


『それで、どうするの?池袋行くの?』

「……俺は―――」

「「行く―っ!」」

「…………」


いつまでも決まらないので臨也に改めて聞くと彼は眉を顰め、答えを出そうとした瞬間、二人はそれを遮って大きな声で自分達の意志を言葉にした。


「何でお前達はすぐ勝手に決めようとするかな。俺はまだ行く、なんて一言も言ってないんだけど」

「とーと、うんどうするんでしょー?それならシズちゃんといっしょにうんどうしてもいいでしょー?」

「ママもパパもいっしょにしずおさんとうんどうすればいいんだよ!」

「……どういう理屈だよ。俺は池袋には行かないからね。確かに運動する、とは言ったけど池袋で運動するなんて言ってないからさ」

『……子供みたいな事言わないの。あまり子供達と外に遊びに行ってないんだから、こういう時ぐらい構ってあげてもいいと思うけどなぁ』

「それがシズちゃんと運動する事になってもかい?俺は御免だね、アイツと一緒に居る、っていうだけで不快なのに」

『またそう言う……』


結局子供達関係は彼が折れる事になるのだからそろそろ無駄な抵抗は止めればいいのに、と思うのだが、それでも彼は嫌だと言う。
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