折原家2
□運動の秋
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<運動の秋>
新宿 某マンション
愛子視点
「ねーねーパーパー!ずっとお家にいたら、うんどうぶそくになるってなみえさんが言ってたよー?」
「うんどうぶそくになったらこわいんでしょー?」
「運動不足が怖いわけじゃないんだけど……健康には悪いだろうね。それで?君達はどうしたいんだい?」
「うんどうしたいっ」
「いっぱい走って―、うんどうするの!」
秋も深まってきた今日この頃。
夏の暑さも何とか落ち着き、やっと涼しくなってきたな、と思う頃には何だか身体を動かしたくなってきて―――それでもここの家からあまり出れない私達は運動する事は難しい。
私達を出さない相手は池袋で天敵と走り回ったりしており、運動不足とは無縁なのだが、私は買い物に行く為や遊びに行く程度しか外に出ないので他の誰よりも運動不足だろう。
子供達も学校の体育で運動をしているので運動不足とは無縁の筈なのだが、外に出る口実が欲しいらしい。
―――たまには家族で運動、なんていいかも。
毎日運動部のような活動をするのは嫌だが、走る程度、身体を動かす程度ならば健康に良い筈だ。
私だって少しずつ歳を取ってきているし、いつまでも旦那―――折原臨也と共に過ごす為には健康であり続けるべきだと思う。
それなのに臨也は[そんな事をしなくても大丈夫だよ]と子供達の誘いを簡単に否定する。
「やだやだぁ!お外でうんどうしてー、アイスたべるの!」
「アイス、さむくなったらたべられなくなっちゃうよー?」
「……目的はそれか。別に冬になってもアイスは売ってると思うけどねぇ」
「ちーがーうー!うんどうしてからアイスたべるの!」
「ポカポカーってあったかくなるよー?」
「……温かくなったのに冷やすなんて、身体に悪いと思うけど」
「パーパー!うんどうしよー!」
「うんどうー!」
子供達の目的はあくまで運動であって、アイスはオマケみたいなものらしい。
臨也がどれだけ否定しようとも、二人は[うんどうしよう]と言い続けており、ここまでの強引さがあれば私も、もっと変われたかもしれない―――なんて思ったり。
いつまで経っても父親が了承してくれないので子供達は臨也が座っている所まで走っていくと膝の上に乗って[うんどうっ]と真っ直ぐな目を向けている。
「……そこまで運動したいのかい?君達、学校で体育をやってるなら別にいらないんじゃないかな」
「とーとのばーか……」
「バーカ、バーカっ」
「父親を馬鹿呼ばわりって……何がそんなに気に入らないの?君達の我儘には大体付き合ってきたと思うんだけどなぁ」
「バーカ……っ」
「バーカ……!」
言い返す言葉がなくなってきたのか、二人で臨也の膝の上に乗って、目に涙を溜めながら[バカ]と言い続ける双子。
そんな二人に臨也も困ってしまい、私に助けを求めるように[どうしたらいいんだろうね]と言う為、溜息を吐き出し、答えを出した。
『パパと一緒に運動したいんでしょ。最近、ずっと外に遊びに行ってないし』
「……ああ、そうだね。……遊びに連れて行ってあげられなくて悪かったよ。今日は君達と一緒に運動しようじゃないか」
「!本当―!?」
「!うんどうしよー!」
臨也は行動派だが、自分が[行きたい]と思わなければ私達を誘わないし、大体の場合は仕事関係なので私達はついていけない。
そうなれば子供達は学校、という空間でしか遊べなくなるし、たまに遊びに行っても門限のように早く帰って来なければいけないので、中々満足して遊んだ、というようにはならないのだろう。