折原家2
□夏にかけて
1ページ/17ページ
注意書き
久しぶりに風邪ネタが書きたくなった結果です。大目に見てもらえると嬉しいです。
<夏にかけて>
新宿 某マンション 朝
愛子視点
『臨也?』
「…………」
『……喉痛いの?』
子供達の声で目覚め、横を見ると何やら喉を押さえている旦那が居て―――どうしたんだろう、と思いつつ問いかけるのだが、
彼は全く答えようとしないので[無理はしないようにね]とだけ言って先にベッドから降りた。
「…………」
『?何か言った?』
「声……出し辛い……」
『……。そっか、最近夏バテ気味だったでしょ、そのせいじゃない?』
扉から外に出ようとした瞬間、今まで喉を押さえていた旦那が何かを発するような動きをしたのだが、聞き辛く問いかけると今度はハッキリと口にする。
最近夏本番、という感じで子供達も外から帰ってくると[あつーいっ]とダラーっとしており、いつもより食べる量も少なくなっていた。
それは旦那も同じようで、夏でもあんな恰好をしてなくてもいいのに―――と思いながら見ているのだが、
外に居る時はまったくそんな素振りは見せず、家に帰ってくると[いつも暑いねぇ]と言ってエアコンが効いている室内で涼んでいた。
―――夏風邪かな、多分。
暑い外からエアコンの中に入れば突然涼しくなるわけで―――そんな生活を続けていれば夏バテになったり風邪を引きやすくなるわけで。
しかも旦那―――折原臨也の場合は睡眠不足も追加されていたので更に引きやすくなるだろう。
だからきちんと寝るように、と言っているのだが、[心配しなくても大丈夫だよ]と言うのだから困ったものである。
『咳とか出るかもしれないからきちんとマスクしてね』
「…………」
彼を見た感じでは少し熱があるような感じはあるが、動けないという程ではない為、動けるなら無理しない程度に、というつもりで許可を出した。
臨也もそれは解っているのか、私の言葉に頷き、手渡したマスクを素直につける姿はとても可愛らしい。
―――やっぱり臨也は風邪引くと素直になるなぁ。
何度も見てきた彼の不調。
その度に私が看病したり、子供達と一緒にだったり、時には彼の妹達と一緒に、という事もあったが、
大体二人きりの時にだけ素直にいう事を聞いてくれたり、甘えてくれるので妻の特権、という事らしい。そんな事を考えている間に臨也はベッドから降りて、
私より先に扉を開けて1階へと下りて行く音が聞こえ、子供達の[パパ、おかぜー?]という声が遠くなっていく。
「ママー、パパのどいたいんだってー」
「とーと、はなしかけないでーって言ってた」
『そっか、喉痛い時は仕方ないよ。静かにしててあげようね』
「「はーいっ」」
私も1階へと下りると既に臨也は子供達へ何かを話したようで、それを報告するように近付いてきて、とても心配そうだ。
二人は自分達のように心配できる優しい心を持っており、私や臨也が風邪を引いてしまった時も[だいじょうぶ?]と泣きそうな顔で心配してくれた。
『……パパ、朝ご飯食べる?』
「…………」
『少しぐらい食べておかないと長引くよ?』
「…………」
「とーとっ、ちゃんとごはんたべなきゃダメっ」
「くるしいよーってなるよ!」
朝ご飯を作っている間も彼は喉を押さえたり、軽く咳をしたり、水を飲んだりしていたようだが、良くならないようで溜息を吐きながら書類に目を向けていた。
そんな中、彼に問いかけたのだが、首を振るばかりであり、こちらが溜息を吐きたくなったのだが、子供達は大きな声で父親に迫っていき、怒るように声を出した。