折原家2

□ホラー映画
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それを彼は[夏だから]なんて理由で、こうして私達の好きなアニメや映画を借りてきてまでホラー映画を見たのだから臨也の行動力、というのはいつでも驚かされる。

前も鍋が食べたい、と言ったら彼はすぐにお店などを調べて[近くにあるから行こう]と言って私を連れだしたり、

子供達のクレヨンの色が足りない、となったら[ついでに買ってくるよ]と言って買ってきたり―――見習いたい程によく動く。

まるで動くのが行き甲斐だ、とばかりの彼に何故そんなにも動けるのか―――と問いかけると臨也は笑いながら[面白いものが見えるからさ]と答えた。


――「寄り道して帰らなかったらさ、見えるものって変わらないだろう?夜と朝、っていうのは勿論違うけど……

ちょっとした視点を変えるだけでも、人間が見ている物っていうのはバラつきが出るのさ。例えば……そうだな。慌ててる人間と俺みたいに散歩しながら歩いている人間。

1匹の猫がその通りを歩いていても、慌ててる人間は勿論気付かないだろう。でも、散歩していたらそこに何匹猫がいるのか、なんて事も気付くかもしれない。

……話がズレたけど、俺はそんな視点で歩きたいのさ。用事があるから歩く道と、終わった後の帰り道。きっと見え方が変わってくると思うんだよねぇ」


と、とても楽しそうに語り、確かにそう言うものなのかな、なんて思ったりした。慌てて池袋から家に帰る道と時間があるからと、ちょっとのんびり歩く帰る道。

こんな所にこんなお店が―――と気付くのは大体時間があったり、のんびりしながら歩いてる方だ。


『……子供達がトイレに行けなくなったらパパのせいだからね。責任は取ってもらうから』

「解ってるよ。そのつもりで怖い、って評判のホラー映画を借りてきたんだから」


―――――――……

夜中 寝室

愛子視点


『……臨也、起きてる?』

「……俺に怒ってたのに君がトイレに行けない、なんて子供達に話したら笑われるよ?」

『ち、違うの……っ、トイレじゃなくて……あのさ、外から物音聞えない?』


断じて怖くて眠れなかったわけではないのだが、既に臨也すら寝てしまうような時間帯まで眠れなくて―――

このまま眠れないのかな、なんて考えていると何やら外からゴソゴソ、と聞こえ、何かを引き摺るような音が聞こえてくるのだ。

映画にもそんなシーンがあり、私が思わず臨也に抱き着いてしまった所なのだが、まさか現実でも起きるなんて思わなかった。


いつもとても静かで、臨也が起きている時は[起きている]という安心感があって眠れるし、音が聞こえても彼が来たのかな、

なんていう事しか考えられなかったのだが、今現在臨也が寝室にいる、という事は起きている人間なんて存在しない筈だ。

それなのに外から音が聞こえ、それは大きくなったり小さくなったりと私達の寝室の近くをウロウロしているかのような感じだ。


臨也もその音が聞こえたのだと思うのだが、すぐに[気のせいだよ]と笑って私を寝かそうとするので起き上がって抗議しようとしたのだが、

彼は[大丈夫だからさ]と言うだけで何も言ってくれない。何が大丈夫なのか、本当に私の気のせいなのか―――

何も分からないまま私は臨也の子供のような扱いに安心してしまって眠気が勝ってしまう。

好奇心があれば起きていられると思ったのだが、彼の頭を撫でる仕草は万能でそんな心ですら打ち消してしまう効果がある。


―――起きて、いたいのに……。


―――――――……

臨也視点


「やっと寝てくれた、かな」


ホラー映画を見て怖がっているのは何も子供だけではない。

妻である愛子も同様に[怖い]とは言わないが、怖がり、こんな遅い時間まで眠れずに起きていたようだ。
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