折原家2

□ホラー映画
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<ホラー映画>


新宿 某マンション

愛子視点


「ただいま。いい子にしてたかい?」

「「おかえりー!」」

『おかえり、パパ』


いつもより遅めに帰宅した旦那。

いつもは夕方か、子供達が帰ってくる前には家にいる事も多いが、時々こうやって遅くに帰ってくる事がある。

それを浮気だとは疑わないし、彼も私と一緒に居る時にどういう仕事だったのかを教えてくれるので[また人間観察してたんだろうな]程度にしか考えていない。


大体私の考えている事は当たっており、楽しくてつい遅くなった、もしくは取引先と長話をしてしまった、などなどだ。

まあ池袋に行った時の彼の答えは天敵である静雄さんに見つかった、が一番多いのだが。玄関で迎えた私達と一緒に事務所兼リビングに入ると何やらゴソゴソと動き出す旦那。

子供達は興味津々、という感じで近くでウロウロしていたが、私は旦那である男―――

折原臨也の為にご飯を用意しなければいけないので気になってもそちらに行けず、[何やってるんだろう]と台所から覗きながら彼の動きを眺めている。


―――テレビ?


彼が動いている周辺は大きなテレビが置いてある周辺であり、何かを取り出してはテレビ台に置いてあるブルーレイレコーダーに入れて[これでいいかな]と独り言を呟いていた。


「パパー、何やるのー?」

「ゆうへいさんっ!?ゆうへいさん見るのー!?」

「ゆうへいさんっ!ゆうへいさんのえいが、見るの!?」

「悪いね、君達の要望に沿えなくてさ。今から見るのはホラー映画だよ。これ、結構怖いらしいから……お前達も怖がってトイレに行けなくなっちゃうかもね」

「!こわいのっ!?こわいの見るより、ゆうへいさんのえいが見ようよー」

「!ぼくもこわいのより、ゆうへいさんがいいー」


まだそんなにホラー映画を見ていない二人にとっては怖い物と言われても、臨也が怒る、ぐらいしか怖い物なんてないと思う。

それに幽霊、と言われても何が怖いのか解らないだろうし、小さい時に見ていたとしても覚えていないだろう。


―――……幽平さんの映画を見よう、っていうのは賛成だけど……。


私は臨也に何度か[一緒に見よう]と言われて経験しているので二人の意見には賛成なのだが、彼は全く意見を聞き入れようとはせず、

[ほら、お前達も座りなよ]といつの間にか座ったソファの隣を軽く叩いている。

また彼は[君達の怖がる表情が見たくなった]なんて訳の分からない事を言い出すのかと思うと溜息を吐き出したくなったが、

そろそろ出来上がるので火を切って彼の分のご飯をテーブルの上へと運んでいく。


「君はどうする?俺の隣、まだ空いてるけど」

『……来て欲しいなら来て、って言えば良いじゃん』


わざわざ子供達を右隣に座らせ、左を開けたのだって、一緒に見ろ、という彼からの無言の命令であり、私がそれを知っている事を知りながら問い掛けてくるのだから意地悪だと思う。

今度は溜息を吐き出し、火元や片付けるも物がないかを確認した後、[まだ来ないの?]とばかりに待っている彼にもう一度溜息を吐き出しつつ、彼の左隣に腰掛けた。


―――怖いのあんまり好きじゃないんだけどなぁ。


―――――――……

上映中

愛子視点


「っ、び、びっくりした……」

「っ、大きな音、こわいねー」

『心臓がいくつあっても足りないよ……』


怨霊が襲いかかってくるシーンや突然、バン、と出てくるシーンはどうしても大きな音になり、子供達も手を繋ぎながら怖がっていて、私もつい臨也にしがみついてしまった。
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