折原家2

□触りたい
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注意書き

ふと臨也さんの首とVネックを見ていたら思いついた話←変態


<触りたい>


新宿 早朝 某マンション

臨也視点


『……んー……ぱぁぱ……』

「……?……どうしたの……?」


空が明るくなり始め、そろそろ早い人間ならば動き出すであろう時間帯。

そんな時間でも俺は睡眠が欲しくて布団に顔を埋めるように、起こすな、という意味も込めて眠っていたのだが、隣で寝ている妻が舌足らずな声で俺を呼び、近付いてくる。

最初無視しようかとも思ったのだが、目を開けてしまえば最後、頭が覚醒していき、そちらに意識を向ければ妻は俺の存在を求めて手を伸ばしている様だ。


『……?……あれー?』

「?」

『?あれー?……?』


仕方なくその手を取り、自分の身体に押し付けるようにしてもう一度眠ろうとしたのだが、相手は起きてしまったようでたくさんのクエッションマークを浮かべている。


「どうしたんだい、そんなに不思議そうな顔をして。まだ起きる時間じゃないよ」

『……そっか、あたし、まだねてるんだねっ!紫苑、おやすみなさーいっ』

「ああ、おやすみ。……?紫苑?」


何を理解したのか、俺の[まだ起きる時間じゃない]という言葉に納得し、枕に顔を擦りつけるようにして、そのまま眠ってしまった。

俺ももう一度眠ろうとしたのだが、先程妻が放った言葉が忘れられなくて、思わず彼女を凝視する。


―――何で愛子は俺じゃなく、紫苑の名前を呼んだんだ?


いつも二人っきりの時は[臨也]、[愛子]と呼ぶ事が多く、彼女は子供達が居る前でも癖で[臨也]と呼ぶ事はあっても、間違えて息子の名前を呼ぶ事は無い筈だ。

夢を見ていて間違えて俺ではなく、息子の名前を呼んでしまった、というのなら何となく解るのだが、彼女の発言からそれは違うような気がした。


元から隣に寝ているのは息子で―――それを父親である俺と勘違いし、何故自分は父親と寝ているんだろうと首を傾げ、

[まだ夢を見ている]と理解し、もう一度寝てしまった、というのが合っているような気がした。


―――……考えられる可能性は一つ、かな。


娘と妻である愛子が入れ替わった、という可能性だ。

だがそれは実際に娘の方を確認して見ないと解らないし、もしかしたら娘は息子と入れ替わっているかもしれない、という事だ。

何となくだが、愛子と娘である筑紫は入れ替わっている―――という勘と言うか、そういうものを感じ、溜息を吐き出す。


「ありがちだけどさ……あまり嬉しくない入れ替わりかな」


妻が家の全てをやってくれているので無駄な業者や小言の多い秘書に頼まなくて済んでいるのだが、

もし俺の考えている事が当たっていれば秘書に頼まなければならなくなる―――とこれからの事に頭を抱えた。


『んー……紫苑、おはよぉー』

「……おはよう」

『?元気ないねーおねつでたの?ママに言ってがっこうおやすみするー?』

「そういうわけじゃないよ。ちょっと、ね」


そんな事を考えていると腕の中に居る娘であり、妻である女がゆっくりと目を開け、

既に俺が父親である事や自分が母親の姿である事なんて知らないように顔を覗き込み、不思議そうな表情をしている。


『?……ねー、パパとママ、おこしに行こうよー!きっとママ、またおきられなーいって言ってるよー』

「そうだろうね。……ねえ、一旦自分の身体を見てみようか」

『?どーしたのー?パパみたいだよ?』


濁すように言うと首を傾げながらも、いつも通りの[日常]を過ごそうとする娘に酷だとは思ったが、言わないよりはマシだと思い、

ハッキリ言ったのだが、まだ俺自身を息子だと思っている為、信用してくれない。
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