折原家2

□おべんきょう
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<おべんきょう>


新宿 某小学校

視点なし


「―――――それじゃあこれは宿題にします。明日、先生の所に持って来てね」


授業の終わりがけ―――担任の教師は黒板に書いていた文字を書くのを止め、生徒達を見ながらそう言った。

その言葉に反応するように子供達は[はーいっ]と元気よく返事をする生徒や、

[やりたくない]と文句を言う生徒など様々な反応に分かれながらも教師は[忘れちゃダメだからね]と念を押し、話を続けていく。


「ねーねー紫苑くんは、16+4のこたえわかるー?」

「あたしもわかんないからおしえてー」

「おれ、わかるぞ!19だろー!」

「えー、20でしょー」

「ぜったい、24だよー!」


教師の話が終わり、帰る時間となったのだが、一人の子供の周りにはたくさんの子供が集まり、今日出された宿題について話をしていた。

そんな中、中心にいる子供は先程出された問題について考えており、指を使ったら皆に解らない事がバレてしまうので指を使わないように計算していく。


―――えーと……6+4が……えーと、うーん……10で、10と10で……うーん……。


―――――――……

同時刻

視点なし


「ねぇねぇ、筑紫ちゃん。[おおきい]ってこれであってるかなー」

「こっちだろー」

「えええ、こっちは[いぬ]だよー」


全く違うクラスでも同じような宿題が出たようで、こちらは似たような漢字を書く宿題のようだ。

大きくなればどちらが正しいのか解るのだが、まだ小学一年生の子供達にとっては難しい事らしく、[大]と[犬]が、どちらに当てはまるのか考えている様だ。


―――いぬは……ええと、てんがあって……おおきいには、てんがなかったんだっけ……。

―――いぬには、てんがなくて……おおきいに、てんがあったんだっけ……。

―――わかんなくなっちゃった……。


―――――――……

数十分後 新宿 某マンション

愛子視点


「「うーん……」」


子供達が帰って来たかと思えば、ランドセルから何やらゴソゴソと取り出し、テーブルの上に並べると難しい表情で悩んでいる様だ。

いつもなら[おやつーっ]と私におやつをせがんでくるのだが、宿題がある日はこうやっておやつの前に宿題を済ませてしまいたいらしい。

だが、二人の手は止まったままであり、先程から問題が書かれた紙を見ながら[えーと……えーと……]と考えている。


―――そんなに難しいのかな……。


いつもならそこまで時間もかからず、[おわったーっ]と埋まった紙を私や父親に見せてくれるのだが、まだその時は来ないようだ。

二人が言うにはもうすぐ2年生になるので少しずつだが、2年生になる為の問題や1年生の復習をやっているらしい。

復習は二人にとっては楽な物らしく、[かんたんー][もっとむずかしくてもできるよー]と胸を張っているのだが、2年生になる為の問題がまだ難しいらしい。


「あれ、今日は珍しいね。いつもなら終わらせてるのに」

「むずかしーのっ!とーとは16+4、できるー?」

「パパ、どっちがいぬでーどっちがおおきいー?」


旦那も二人が悩んでいるのが珍しいのか、コーヒーを飲みながら休憩のように仕事の手を止めていた身体を立ち上がらせ、カップを持ったまま二人の元へと歩いていく。


「……へえ、難しいかもねぇ」

『……そんなに難しいの?』

「まあ俺らからしてみたら、何て事のない問題なんだけど……二人からしたら難しいかもね、って事さ」


二人の宿題を見たのだろう。

旦那―――折原臨也は目を細めながら少し楽しそうに呟くのでそれ程難しいのか、と少し驚きながら問い掛けると、クツクツと喉を震わせるような笑いでそう言った。
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